プレゼンでつい添える「結論を先に言うと」。便利なはずの前置きが、実は「不安を隠すお化粧」だった――。駆け出しのコンサルタントだった著者は、クライアントの前で「結論を先に言うと」と言ってしまう。その一言に対し、上司は「ダサい」と断言する。著者はその時初めて、相手の論点を掘り当て、答えを1メッセージに尖らせる重要性を知る。言葉を削り、考えを研ぐための視点を、書籍『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』から一部抜粋して紹介する。

「仕事ができる人」ほど使わない“ダサい言葉”とは?Photo: Adobe Stock

「仕事ができる人」ほど使わない“ダサい言葉”とは?

 駆け出しのコンサル時代のことだ。

 クライアントとのミーティングでわたしはプレゼンをした。プレゼン自体はすらすらと進み、大きな問題はないように思えていた。しかし、帰り道、シニアコンサルタントからこう指摘された。

「今日の杉野さんのあの台詞、ダサかったよ」

 なんのことかわからなかったが、とにかく顔が真っ赤になった。思い返してもどの台詞のことかわからず、わたしはシニアコンサルタントにどの台詞のことかを尋ねた。

「結論を先に言うと」は“ダサい”

 シニアコンサルタントはこうわたしに言った。

「杉野さんが途中で言っていた『結論を先に申し上げると』はダサい」

 意外な答えが返ってきた。コンサルであればアンサーファーストとも言われるが結論を先に話せと教えられる。このため、当時のわたしはその台詞をよく使っていて、その台詞を言った後に自分の考えを1メッセージで伝えていた。しかし、シニアコンサルタントからの続くフィードバックで頭を殴られたようになった。

「結論を先に言うと」は結論を考えられていない証である

「相手に刺さる結論を1メッセージで考えられていれば、わざわざ余計な『結論を先に申し上げると』と前置きなんてしなくても自然と伝わるはず。そこで自分の思っている結論を言っても相手に刺さらないから、お化粧として『結論を先に申し上げると』と前置きして“結論だと思ってください”と相手にお願いしているようなものでしょ」

 なにも言い返せなかった。

 わたしは自分が1メッセージで伝えようとしている“結論だと思っているもの”に自信がないから、「結論を先に申し上げると」と前置くことで、自分が言うことを無理やりに結論にしている面が確かにあった。

 結論とは相手の論点への答えを1メッセージにしたものだ。相手の論点を気にせずに、自分の言いたいことを一方的に一言にしたものではない。

 わたしは相手の論点とそれに対する答えをとことん考えることができておらず、それを隠すために言葉のお化粧に逃げていたのだ。「結論を先に申し上げると」は結論を考えられていない証であった。わたしにとっては痛恨のプレゼンだったが、幸運にも最高の学びを得たプレゼンになった。

「結論を先に言うと」と言うよりも、もっと結論を考えよう

 その学び以来、わたしはプレゼンで「結論を先に言うと」と言うことはなくなった。そう言いそうな自分がいたら、自分は相手の論点やその答えをしっかりと考えられていないのだと自戒することにしている。

 相手に刺さる結論の1メッセージとは、言葉のお化粧で生まれるものではなく、どこまでいっても相手の論点への答えを考え抜いた先にしか生まれないものなのである。

(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)