研究における一貫したテーマは「クリエイティブな人と、能力は高いがクリエイティビティの低い人のあいだには、知能や幼少期の体験、パーソナリティ、社会的役割などで違いはあるのか?」でした。

「クリエイティブな人」は
はたして「頭がいい」のか?

 クリエイティブな人は、そうでない人に比べて、単に知能が高いのでしょうか?IPARの研究は、そうではないことを示しています。

 両群のIQ値には、有意な差はありませんでした。とはいえ、この研究の被験者は皆、高学歴で専門的な仕事をしている人々です。

 従来のIQ検査は、平均的なIQ値である「100」の人を区別する場合に信頼性が高く、値が両極に近づくにつれて、信頼性が低下していきます。そのため、両群に差が見られなかったのは、IQの測定ツールの精度が低かったためかもしれないとも考えられます。

 しかしIPARでは、IQ値120でもっとも信頼性が高まるように開発された特殊な評価ツールを用いていました。そして、この高精度のツールを用いた結果でも、クリエイティビティが高いグループとそうでないグループにはIQ値に違いは見当たりませんでした。

 つまり、クリエイティビティの高い建築家の知性は概して高いものの、クリエイティビティの低い建築家とのあいだに差はなかったのです。

 では、クリエイティブな人の高校時代の成績はどうだったのでしょうか?研究の結果、クリエイティブな人は、「オールA」をとるような秀才型ではなかったことがわかっています。

 ただし、全体的な成績はそれほど高くなくても、その人がクリエイティビティを発揮する分野の科目の成績は高く、それ以外の科目では平凡な成績というパターンが見られました。

「自由な育ち方」が
自主性と創造性を生み出した

 子ども時代や学校教育を通じて、クリエイティブな人にはいくつかの共通点が見られました。子どもの頃に家族から尊重されていたこと、自分の好きなことをさせてもらえたこと、自主性を育んだこと、両親と過度に親密ではなかったこと、両親との関係で強烈なネガティブ体験(たとえば、日常的にきつい体罰を受けていた)をしていないことなどです。