向かい合わせの女性のシルエット写真はイメージです Photo:PIXTA

人が、ときとして普段とはまったく違う行動をとるのはなぜなのか。そして、それは果たして偽りの自分なのか。それとも本当の自分なのか――。「パーソナル・プロジェクト」のために自ら選択して行動する人間心理を、心理学分野で世界的に有名な研究者がわかりやすく解説する。※本稿は、心理学者のブライアン・R・リトル著、英日翻訳者の児島修訳『ハーバードの心理学講義』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。

外向型のように振る舞う
内向型の人たち

「ときどき、普段とはまったく違う行動をとる人がいるのはなぜだろう」と思ったことはありませんか?内向型の人が、パーティで外向型のように振る舞うことがあるのはなぜなのでしょう?普段はピリピリしている人が、休暇中だけは、家族でも驚くほど優しくなることがあるのはどうして?

 2人の例を用いて説明しましょう。外向型のように振る舞う内向型のマーカスと、優しさときつさの両面を併せ持つステファニーです。私はこのテーマを研究してきた23年間を通じて、この2人とよく似た人たちを数多く見てきました。

 マーカスは複雑な男性です。モントリオールのインディーズ音楽ビジネスでは、ミュージシャン兼興行主として名が知られています。誰かと一緒にいるときは、相手を楽しませ、その場を盛り上げようとします。彼が部屋に入ったとたん話が始まり、話題が尽きることはありません。

 しかし、マーカスには別の側面があります。スポットライトを逃れて部屋に引きこもり、分厚い哲学書を読みふけるのです。こういうとき、彼は正真正銘の内向型のように振る舞います。