それは「ひとまずは戦争をせず平和に南北が共存し、無理に1つの国を形成せずに合法的な交流を広範囲で行う」というものだ。日本で考える統一像とは異なるものではないだろうか。
他方、人々がこんな複雑な統一観を抱いていることは韓国でも普段、特に言及されない。
実際にソウル大学統一平和研究院による2021年の調査では「統一とは何か」と聞く設問について6割以上が「1つの国になること」と答えていることから、統一研究院のように深く聞いた時に本音が表れるというふうに理解できる。普段から統一を考える習慣というのはなかなか存在しない、というのが実際のところなのかもしれない。
『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』(徐 台教、集英社クリエイティブ)
とはいうものの、設問によって答えが異なる現状をどう見ればよいのか。韓国人はいったい、統一についてどう考えているのか。本音はどこにあるのか。
李相信はこれについて、「深く聞いてみないと分からないものがある。そうでなくとも韓国人には『統一に反対することは倫理的に禁じられている』という認識がある。だが実際には、統一への無関心ではなく、統一への意識は多様化していると考えるのが自然だ。これに従い、韓国政府も1つの国になるという現在の統一像を改める必要がある」とまとめてくれた。
もはや一筋縄ではいかない、という認識を持つ必要があるだろう。
韓国社会も南北関係の未来像について、統一した意識を持っていないのである。







