つまり、どれほど優秀な人材(スーパースター)を雇うよりも、害悪をもたらす人間(毒性労働者)を一人排除するほうが、企業にとっては2倍以上も得をするというのである。

 具体的な数字を見れば、その差は歴然としている。

 論文によれば、トップ1%の超優秀な人材を雇うことによるコスト削減効果は5303ドル。対して、毒性労働者を避けることで回避できる損失は1万2489ドルに達する。プラスを伸ばすよりも、マイナスを削るほうが、経済的パフォーマンスは圧倒的に向上するのだ。

「あいつは性格は悪いが、仕事は速い」と言っていると失うもの

「火事のおかげじャ」ダイソー創業者が自宅を放火されてもポジティブになれたワケ「ダイソー」の商品を手にする矢野博丈氏 Photo:JIJI

 では、どのような人間が「毒」になるのか。

 矢野氏の周囲にいた「放火魔の老婆」のように、明らかに他害を加える存在ばかりではない。研究によれば、一見優秀に見える人間の中にこそ、「毒」が潜んでいる場合がある。

 論文によると、自信過剰で、自己中心的(Self-regarding)であり、さらに『ルールは従うべきだ』と公言する労働者ほど、毒性行動により解雇される可能性がはるかに高いことがわかっている。

 さらに驚くべきことに、面接で「ルールは絶対守ります」と答える人間ほど、実際にはルールを破りやすいというデータが出ている。これは、彼らが正直者なのではなく、採用されるために耳触りの良いことを言っているだけということだ。さらに、毒性労働者は往々にして、生産性(作業スピード)だけは平均よりも高い傾向にある。

「あいつは性格は悪いが、仕事は速い」

 そう言って経営者が見て見ぬふりをしている間に、毒は周囲に感染し、組織全体を腐らせていく。