ギルバートは未来の自分の感情を予測することを、「感情予測」と呼ぶ(注7)。
周りで何かよいできごとや悪いできごとが起こったら、「このできごとは、あなたの感情にどれだけの影響をどれだけ長くおよぼすと思いますか?」と、人に聞いてみるといい。
または、人生の転機となるようなできごとを実際に経験した人を探して、感情にどれだけの影響がどれだけ長く生じたか聞いてみよう。
どんなできごとや状況に関しても、予測と実際の感情は一致しないことが多い。
私たちはできごとの影響の大きさと持続期間を実際よりも過大に予測し、とくにネガティブなできごとの場合にこの傾向が強い。
テストに失敗した悲しさは
終わった喜びで上書きされる
ある研究で、学生に2週間後に行われる試験についてこう尋ねた。
「もし試験の点数が思っていたよりも低かったら、それを知ってからの1週間のあなたの幸福度はどれくらいになると思いますか?(注8)」
また、点数が「予想通り」だった場合と、「予想よりも高かった」場合の幸福度も予測してもらった。
学生は一般に、成績が予想通りかそれ以上であれば、幸福度は高くなり、予想より低ければ幸福度は低くなるだろうと答えた。
だが試験が終わり、点数が公開されてから調査すると、点数が予想より高かろうが低かろうが、全員の幸福度のレベルはほぼ同じだった。
もしかすると、学生は人生経験が少ないから、挫折や失敗の影響を正確に予測できないのかもしれない。もしそうなら、試験に何度も落ちた人は、失敗した時の感情をより正確に予測できる、ということになる。
たとえば、イギリスでは運転免許の実技試験に一発合格する人は半数に満たないから、免許試験の受験者には、次に合格または失敗した時の感情を正確に予測できるだけの経験を積んだ人がいるはずだ。
(注7)Gilbert, D. and Wilson, T. (2003), ‘Affective forecasting’, Advances in Experimental Social Psychology,35, pp. 345-411.
(注8)Levine, L . J ., Lench, H . C ., Kaplan, R . L . et al. (2012), ‘Accuracy and artifact:reexamining the intensity bias in affective forecasting’, Journal of Personality and Social Psychology, 103(4), pp. 584-605.







