スーパーセンテナリアンやセミ・スーパーセンテナリアン(105歳から109歳まで)は、普通のセンテナリアンと比べて、実際に健康状態が良い傾向が見られるのだ。彼らはスーパーサバイバーであり、これほど高齢になると、寿命と健康寿命はほぼ同じになる。パールズらは論文に、こんなタイトルを付けた。

「年を取るほど健康になる」

 数学の用語を使うなら、センテナリアンの遺伝子は時間に関する位相シフトをもたらしてくれた。寿命や健康寿命の曲線全体が、10年から20年(場合によっては30年!)、グラフの右側に移動している。

 こうしたセンテナリアンは単に長生きするだけではない。生涯を通じて同年代の人たちよりも健康で、生物学的に若い。60歳のときの冠動脈は、35歳並みだった。85歳のときには、外見も感性も体の機能もまるで60代のようだった。運転免許証に記載される年齢よりも30年は若く見える。こうした効果にぜひあやかりたいものだ。

数千人のセンテナリアンの
ゲノム解析の結果は?

 センテナリアンと私たちは同じではない。センテナリアンは遺伝子と(または)幸運に恵まれ、長寿も健康もほぼ偶然に手に入れているようだ。しかしその他大勢の私たちは、意識的に努力して手に入れなければならない。

 そうなると、つぎのふたつの疑問について考える必要がある。センテナリアンはどのようにして慢性病にかかる時期を遅らせ、慢性病を回避するのだろう。そして私たちは、どうすれば同じようにできるのだろうか。

 ここでは遺伝子に注目したい。ほとんどの人は長寿の遺伝子を持つ両親に恵まれなかったため、受け継ぐ機会を逸した。

 それでも、センテナリアンを優位に立たせている遺伝子を特定することができれば、表現型にリバースエンジニアリング〔表現型という「結果」から遡って、それをもたらす遺伝子型や、その発現のプロセスと構造を分析すること〕を施すことができるかもしれない。

 これは比較的単純なタスクのように思える。数千人のセンテナリアンのゲノム配列を解析したうえで、一般集団と比べてこの集団で広く共有される特定の遺伝子や遺伝子変異を突き止めればよい。