それがあなたにとっての候補遺伝子になる。そこで研究者は実際にこれに取り組み、数千人を対象にゲノムワイド関連解析〔特定の疾患や体質に関連する遺伝的な特徴を網羅的に調べるために用いられる手法〕を行なったが、ほとんど成果は得られなかった。
遺伝子に関して、センテナリアンのあいだに共通点はほとんどなさそうだった。そうなると結局、類まれな長寿は偶然以外の何物でもなかったとしか考えられない。
ひとつの遺伝子だけが、いや数十種類の遺伝子だけが、センテナリアンの長寿と健康寿命の理由である可能性は低い。
『OUTLIVE(アウトリブ)人はどこまで生きられるのか:健康長寿の限界を超える科学的戦略』(ピーター・アッティア著、ビル・ギフォード著、小坂恵理訳、NHK出版)
広範囲にわたる遺伝子の研究からは、何千とまではいかないが、何百もの遺伝子が長寿には関わっており、それぞれの遺伝子が独自の形でささやかに貢献していること、さらには「完璧な」センテナリアンの遺伝子など存在しないことが暗示される。
これは実際のところ、家系にセンテナリアンが存在しない人たちには朗報だ。なぜなら、遺伝子レベルにも特効薬など存在しない可能性があるからだ。センテナリアンでさえ、ささやかな分岐が大きな違いにつながっている。
だから私たちも小さな介入を積み重ねていけば効果が現れ、センテナリアンと同じようにいつまでも健康に長生きできるかもしれない。
あるいはこう言ってもよい。平均寿命を上回り、健康で長生きしたければ、手に入れるための努力を惜しまず、少しずつ徐々に自分を変えていかなければならない。







