がんの発症が30年も遅い
センテナリアンの特異体質

 ではなぜ、センテナリアンについて詳しく知る必要があるのか。

 なぜなら、これは自分たちに関わる問題だからだ。センテナリアンは遺伝子を通じて「ただで」恩恵を受けているが、私たちも行動を通じて同じ恩恵を受けられるだろうか。

 あるいは専門用語を使うなら、たとえ遺伝子型が異なってもセンテナリアンの表現型を再現し、病気に抗って同じように長生きできるだろうか。

 もしもこの質問への答えがイエスならば――私はそう確信している――保険統計的に宝くじ当選者のように幸運な人たちの体内の働きに注目し、これほどの長寿がどのように達成されたのか理解する努力を続けるべきだ。そうすれば、私たちの戦略に貴重な情報が提供される。

 センテナリアンと私たちとのあいだには、決定的な違い、あるいは本質的な違いが存在する。センテナリアンは私たちと同じ病気にかかるとしても、発病する時期がきわめて遅い。

 2年や3年ではなく、何十年も遅い。ニューイングランドでセンテナリアンの調査を実施しているボストン大学のトーマス・パールズらによれば、一般集団の5人にひとりが、72歳までに何らかの種類のがんだと診断される。

 しかしセンテナリアンの場合、5人にひとりという閾値を迎える時期は100歳、すなわち30年ちかく遅い。

 同様に、一般集団の4人にひとりは、心血管疾患の症状が臨床的に顕著に見られると72歳までに診断されるが、センテナリアンは、92歳になるまでそのレベルに達しない。

男女の比較で浮かび上がる
寿命を決める決定的な要素

 同じパターンは、骨強度が低下する骨粗しょう症にも当てはまり、センテナリアンは平均よりも16年遅い。脳卒中、認知症、高血圧にも同様の傾向が見られる。センテナリアンはこうした症状が現れるとしても、その時期がかなり遅いのだ。

 ただし並外れた長寿をまっとうする人は、病気になる時期が遅いだけではない。高齢者は心身が衰えて惨めな時期を経験すると言われるが、そんなステレオタイプが当てはまらない人も多い。