とはいえ、日本に留学するにも、まずは基本的な日本語の語学力を身につける必要がある。ただ、最近の中国人留学生は、その時間も短縮しようと、午前は日本語学校、午後は大学受験に向けた予備校といった具合に、2つの学校を掛け持ちすることが一般的になっている。

 行知学園では、こうしたニーズに対応するため、語学と大学受験の両方のコースを提供する。学費は「日本語学校分」が年間約90万円、「大学受験予備校分」が年間約60万円だ。

 ただ、美大を目指す美術コースの場合は、年間約200万円と跳ね上がる。

 だが、たった200万円で美大に合格し、日本のゲーム会社やアニメ関連などの企業に就職することができ、永住権を取得する道が開けるのなら安いものだと、同コースにも毎年、中国人の応募者が殺到する状況なのだという。

 実際、行知学園の合格実績を調べてみても、中国人留学生に人気の理由がよく分かる。

 2024年度は、同校から日本全国の美大に163人もの生徒が合格を果たしている。内訳は、東京藝術大学1人、多摩美術大学21人、武蔵野美術大学11人、女子美術大学2人、京都精華大学23人、京都芸術大学16人――といった具合だ。

永住権獲得のためには
美大に入るのが一番の近道

 高田馬場周辺に集まる、そのほかの中国人向け大学予備校にも今、こうした「美術コース」なるものが次々と設立されている。美大人気はやはり、少し過熱気味だと言ってもいい。

 行知学園で美術コースを統括する本間徹郎・美術部長もその人気ぶりを認める。

「この人気は今では、日本の地方の美大進学にまで広がっています」と明かす。

 さらに「中国人留学生が殺到したことで、日本の美大の留学生枠の倍率もかなり上がってきています。2015年頃なら、デッサンができない留学生でも正直、日本の美大に入学できました。ですが、最近は日本人の学生よりも、レベルが高い人が増えている状況にあります」と話す。

 一方、最近は、別の問題も感じているという。