「美大進学希望者が、これだけの勢いで増えてはいますが、受け身の学生も同時に増えているように感じます。例えばですが、日本に来たものの、何を一体どうすればいいのか、分からないという学生までいるのです」と、本間氏は明かす。
どういうことか。
「親に日本に留学するようにだけ言われて、子供は、ただそれに従って日本に来るケースがあるのです」と打ち明ける。
中国の親の間で、日本の美大進学が、日本の永住権取得の近道にもなることが知られるようになり、親が積極的に動いて、子供を大学進学予備校の美術コースに入学させるケースが増えているようだ。
実際、行知学園とは別のある中国人向け大学進学予備校に勤務する男性担当者も「最近は子供より、親の方にむしろ日本の美大留学への強い熱意を感じます」と漏らす。
子供が日本の美大に進んで、高度外国人材に認定されれば、その帯同家族として、中国に住む自分にも、日本永住のチャンスが回ってくることを意識しているというのだから、恐れ入る。
だが、調べを進めると、さらに驚くべき実態も分かってきた。今の中国人留学生からみると、人気はどうやら日本の美大だけには留まらないようである。
経済低迷で閉塞感も漂う中国。失業率が上昇し、行き場を失った中国の若者が、日本の「大学院」を目指し、ニッポン移住の道を探り始めている。
学歴ロンダリングが容易な大学院も
日本永住の新たな入り口に
「中国の大学を出ただけの中国人では、日本企業はまだ偏見もあるようで、採用を渋ります。ただ、日本の大学院さえ出てしまえば、ある種の『学歴ロンダリング』が成立し、日本企業は、中国人を採用しやすくなり、我々も日本移住を叶えやすくなります」。ある中国人男子留学生はそう話す。
その男子留学生は、さらに続ける。
「今の多くの中国人留学生が、日本の大学院を選んでいる大きな理由は『学歴』が欲しいからです。日本の大学院は、欧米の大学に比べて留学生には甘く、入学がしやすいのです。だから日本の大学院が選ばれています。日本の大学院に行って、何かを追究したり、研究者になったりしたい人が多いわけではありません」







