「日本の大学院ならどこでもいい」
年2回のチャンスが魅力

 カフェでは、もう1人の中国人男子留学生にも話を聞くことができた。

「正直、日本の大学院ならどこでもいいです」

 そう話した山西省出身の蘇世龍さん(24)は、日本語学校と大学受験予備校の2つ掛け持ちで、留学生活を送る。来日したのは劉さんと同じ、中国の大学卒業後すぐの2023年7月のことだった。

 小学生の頃から、「スラムダンク」や「ONE PIECE(ワンピース)」「ドラえもん」など日本の漫画やアニメに囲まれて育ってきた。

「大学で4年間、日本語を勉強していたので、字幕がなくても今は日本のアニメが見られます」と話す蘇さんは、既にビジネスレベルの会話を可能とする「日本語能力試験(N1)」にも合格した。

 彼もやはり、両親ともに国有企業に勤める中間層の家庭で育ったという。日本でアルバイトはせず、年間300万円ほどの仕送りをもらいながら、日本の大学院を目指して留学生活を送る日々だ。

 ただ「日本の生活自体には慣れましたが、人間関係にはまだ実は慣れていないんです。日本人の友達はいません。時々、ちょっと孤独な感じもしますね」と明かす。

「正直、日本の大学院ならどこでもいい」と話した彼はなぜ、わざわざ日本に留学に来る必要があったのか。

「日本の大学院の方が、中国の大学院よりも進学しやすいからです。日本では言語の壁がありますが、中国よりも将来に可能性があります。中国の場合、大学院試験は年に1回だけですが、日本の大学院試験は年に2回もチャンスがあります。そして何より、僕は勉強が好きではないので、競争が激しい中国の大学院試験は受けたくないという理由もあったのです」と、蘇さんは言った。

 そしてこうも続けた。

「中国人は基本、家と車を買って穏やかに生活することをみんな望んでいるのです。だから僕も早く、穏やかな生活を送るために必要な収入を得て、そのあとはのんびり暮らしたいんです」

 将来について聞くと、「卒業後は日本で就職し、日本で穏やかな生活を送り続けたいです」と言って、ほほ笑んだ。