大学院を修了した後は、どうするのか。

「これまでなら、日本で学歴だけ取って、中国に帰るのが一般的でした。中国では、修士以上の学歴がないと、希望するホワイトカラーの仕事には応募もできないからです。ただこの数年は、中国が不景気でみな就職難に陥っています。中国に戻っても職が見つからないため、留学生は日本にとどまり、日本企業に就職する人が増えています」。男子留学生はそう解説した。

年間300万円仕送りして
娘の大学院進学を応援

 実名を出しても良いと言ってくれた、中国人留学生たちにも、その辺りの「本音」を聞いてみた。場所は、中国人留学生のたまり場、高田馬場のカフェだった。

「日本は生活がしやすく、街はどこも便利ですね。日本企業の給与水準や、医療保険制度も魅力に感じているところです」

 そう話してくれたのは、中国人女子留学生の劉悦曄さん(23)。

 劉さんもやはり、コロナ禍が明け、中国の大学を卒業した直後の2023年7月に来日、すぐに高田馬場にある大学院進学のための受験予備校に通い始めたという。

 中国・福建省出身。幼い頃から日本のアニメや漫画が好きで、独学で日本語を習得した。

 日本の男性アイドル2人組の「Kinki Kids(キンキキッズ、現DOMOTO)」の大ファンでもあり、コンサートを見るためだけに「わざわざ日本まで来たこともあった」と話す。

 だが、日本留学を決めたのは、日本が好きだからという理由ではない。

「中国だと大学を卒業しただけでは就職は見つかりません。とはいえ、修士課程の入試も中国は受験者数があまりに多いので厳しく、それなら、日本で修士を取ろうと考えました」と、劉さんは語った。

 父親は、福建省の地元の公務員。いわゆる中国の中間層だが、仕送りは年間約300万円にもなるといい、劉さんはアルバイト1つせず、今は学業に集中し、「学費の安い国立大学の大学院進学を目指しています」と話す。

「1人っ子政策の影響で、私にはきょうだいもいません。その分、両親は私にお金をかけられるのかもしれません」

 そう言って笑った劉さんは、大学院修了後も、日本で暮らす計画を早くも練っているのだという。