『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』は、特別な経歴や夢がなかった“普通の就活生”である著者が、1000冊以上の本を読み込み、自分に合った就活メソッドを築き上げ、食品大手を含む22社から内定を獲得した実体験をもとにした、どんな学生でも内定に近づく一冊です。「自己PRで話せることがない」「インターンに参加していない」といった就活に不安を抱く学生と、そっと背中を押したい保護者に読んでほしい就活戦略が満載です。今回は、“月100時間残業”のカラクリについて著者である「就活マン」こと藤井氏が特別に書き下ろした記事をお届けします。
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月100時間の残業も場合によって認められる
近年、長時間労働に対する問題視は、以前にも増して強くなっていると感じます。ですが一方で、周りの話を聞いていると、実態としては「月の残業が100時間をこえている」という話を、いまだに多く耳にします。
通常、36(サブロク)協定では、残業時間の上限は「原則として月45時間」とされています。
ただし、「特別条項付き36協定」という仕組みがあって、これが適用されると、月100時間未満の残業が認められてしまう。
本来これは「一時的・突発的な業務の繁忙」など、あくまで“特別の事情”がある場合だけのはずです。
しかし正直なところ、「企業側が特別だと言い張れば、なんでも特別になりかねない」というのが、僕が現場を見てきたうえでの感覚です。
もちろん、残業そのものが即「悪」だとは思っていません。
問題なのは、就活生の中に「自分が入る会社に月100時間クラスの残業があることを全く知らされていない」まま、きれいな言葉だけを聞かされて入社し、その後に過酷な長時間労働を知るケースがあることです。こうしたケースは本当に許せません。
採用に「正直さ」を
僕はこれまで8年間、人材業界で経営してきて、求人サイトも運営しています。
だからこそ、会社の“いいところ”だけを並べて、「とにかく採用さえできればいい」と考えている企業も、嫌というほど見てきました。
でも、冷静に考えてほしいんです。入社してくれた人が、長時間労働やミスマッチで1~2年で辞めてしまうなら、その採用活動って本当に意味ありますか?
「正直に、月100時間レベルの残業があると伝えたら、誰も入社してくれない」
もし本気でそう思うなら、まず見直すべきは「情報の出し方」ではなく、「ビジネスモデル」と「働かせ方」のほうです。
・なぜそんなに残業が発生しているのか
・その前提を崩さない限り、何人採用しても同じことをくり返すのではないか
そこから目をそらしたまま、「うまく言い換えて人を集めよう」とするのは、採用ではなく“ごまかし”です。
長時間労働があるなら、長時間労働があると正直に伝える。
そのうえで、「それでもこの事業に関わりたい」「この経験を積みたい」と思ってくれる人に来てもらう。
それが筋だと、僕は思っています。
就活生・若手社会人に伝えたいこと
ここからは、就活生や若手社会人に向けた話です。
まず、求人票や会社説明だけで「ホワイトかどうか」を判断するのは、ほぼ不可能です。
だからこそ、せめて次のポイントだけは、必ず自分の口で確認してほしいのです。
・月の平均残業時間はどれくらいか
・忙しい月は、どのくらい残業が発生するのか
・36協定に「特別条項」が付いているか、実際に発動されることが多いのか
・「繁忙期」と呼んでいる時期は、年間でどれくらいの期間続くのか
これらを聞いたときに、
「繁忙期はあるけど、みんなで業務分担を見直していて、ここ数年は○時間以内に収めてます」と、具体的に答えてくれる会社もあれば、「まぁ…どこの会社もそんなものですよ」と、言葉を濁す会社もあります。
両方を聞き比べてみると、空気感の違いは意外なほどハッキリしてくるはずです。
そしてもうひとつ。
「長時間労働がある=絶対にダメな会社」と決めつける必要もないと、僕は思っています。
スタートアップやベンチャー企業で、「今は正直、長時間労働だけど、その分こういうリターンや成長機会がある」と、きちんと説明している会社もあります。
問題なのは、“その事実を隠すこと”です。
知らされていなかったリスクを、入社後にいきなり背負わされる――
その状態が、一番きついし、不公平だと感じます。
「自分の人生の主導権」を手放さないでほしい
最後に、長時間労働の問題で一番怖いのは、心も身体もボロボロになったあとで、「もっと早く気づいていればよかった」と後悔してしまうことです。
・なんとなく聞きづらくて、残業時間を確認しなかった
・「若手のうちは仕方ない」と、自分を納得させてしまった
・「周りもやっているから」と、感覚が麻痺していった
この積み重ねの先で、心身を壊してしまった人を、僕は何人も見てきました。
だからこそ、就活生や若手社会人には、「働き方」について、もっとわがままになっていい。「この条件なら自分は無理だ」と感じるラインを、ちゃんと持ってほしい。
そう思っています。
企業側には「採用の正直さ」を。就活生側には「自分の人生の基準を手放さない強さ」を。
この両方がそろって、ようやく健全なマッチングが生まれる。
長時間労働の問題は、その象徴のひとつなんじゃないかな、と僕は考えています。
拙書「脇役さんの就活攻略書」では、就活や転職に役立つ自分に合った企業の選び方もくわしく書きました。今回の残業時間のような指標だけでなく、休日数や離職率など、重要な指標についても解説しています。
みなさんの就活を、心から応援しています。








