「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。
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タテ割りは“掛け声”では崩れない
あなたの会社では、タテ割り構造を打破するためにと、他部門との意見交換会や交流イベントが繰り返されてはいないでしょうか。
こうした取り組み自体は無駄ではありません。部門間の雰囲気が和らぐこともあれば、日頃の疑問を共有できる場として一定の意味を持つこともあります。
しかし、交流会や意見交換を積み重ねるだけでは、ヨコの共創は生まれません。
なぜなら、タテ割りの根本原因は“心理的な距離”ではなく、組織に根付く“構造的な分断”にあるからです。
タテ割りが強い組織では、
・部門ごとに追うべき指標が違う
・優先順位が揃わない
・責任範囲が明確に仕切られている
といった構造が横たわっており、単なる人間関係の構築では埋まりません。
では、ヨコの共創が自然に生まれる組織とは、どこが違うのでしょうか?
“局所的課題”を一緒に解く組織に、
ヨコの連携は生まれる
ヨコの共創が生まれる組織は、理念やスローガンから動き出すのではなく、具体的な局所課題の解決を起点にしています。
人と部門は、理念や雰囲気ではなく、“同じ課題に向き合う”ことで初めてつながります。
複数部門の協力が欠かせないテーマとして、たとえば次のようなものがあります。
・M&A後の統合作業
・サプライチェーン全体のコスト削減
・新規事業の立ち上げ
・営業・商品開発・オペレーションの合同改善
これらに共通するのは、どの部門が欠けても解決しない構造的な課題だという点です。
だからこそ、自然と「共闘関係」が生まれ、ヨコの連携が“必要だから発生する”という必然的な状態がつくり出されます。
ヨコの共創は理念や交流ではなく、局所的な課題解決という“具体”を起点に生まれるものなのです。
ヨコの共創は、
“小さな成功”を共有することで加速する
局所的課題の解決を起点にヨコ連携が生まれると、組織は“小さな成功”を共有できるようになります。
たとえば、
「このM&Aの統合作業は、営業と人事が一緒に動かないと進まない」
「このコスト削減は、サプライチェーン全体で取り組んだ方が早い」
といった“共通の認識”が得られると、ヨコの連携は一過性ではなく、再現性を持ち始めます。
すると、協力が依頼ではなく“習慣”になり、部門を超えた視点が養われ、組織全体で価値を生み出す土台が醸成されていきます。
『戦略のデザイン』では、この“ヨコの関係性”をつくる方法を具体的な事例を交えながら詳しく解説しています。
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。




