今回の騒動の発端となった高市早苗首相の「存立危機」答弁を引き出した、立憲民主党の岡田氏はイオングループ創業者のご子息で、イオン取締役兼代表執行役会長・イオングループCEOの岡田元也氏は兄にあたる。

 イオングループといえば中国国内で事業を拡大していることで知られている。イオンモールのホームページを見ると、北京市、天津市、山東省、江蘇省、浙江省、湖北省、湖南省、広東省に合計23店舗がある。また、ジェトロのビジネス短信によれば、スーパーマーケットも着々と増やしていて、例えば広東省だけでも2025年7月時点で42店舗を展開している。

 このように「中国ビジネス」を拡大している巨大企業の御曹司が国会で、中国政府が猛烈に抗議するような発言を、首相から引き出した。そうなれば、先ほどのような「疑惑」の目を向けられるのも当然だ。右派マスコミでも以下のように指摘している。

中国に出店続くイオンと「華麗なる一族」岡田克也氏 「李下に冠を正さず」を知ってますか(産経新聞11月30日)

 この手のネット上の風評はさておき、イオンモールがアニメイベントやJ-POPのような目にあっていないのは「親中」どうこうという話よりも、イオングループの「対中国戦略」が現時点でうまくまわっていることが大きいのではないか、と個人的には考えている。

 その戦略とは、中国共産党の「急所」をビジネスによってガッチリ握ることで、もし反日ムードが高まったとしてもイオンにその矛先が向かないようにもっていく「保険」をかける。いわば一種の「安全保障」だ。

 筆者がそう考える最大の理由は、イオンモールの出店戦略である。

 先ほどイオンモールは中国に23店舗あると申し上げたが、ではあの広大な中国大陸のどこに出店していったのかというと、中国1号店は2008年の北京だ(2023年に閉店)。その後、2010年代は天津市を皮切りに河北省、山東省、江蘇省、広東省、浙江省と店舗を増やし、2014年に湖北省に進出、そして2024年になると湖南省にも進出、11月27日にオープンしたのは湖南省の2号店だ。

「ふーん、だから何?」と思う人も多いだろうが、中国の地理に詳しい人ならばピンときたはずだ。