「日本は中国を侵略しようとしているので日本企業は叩きつぶせ」なんて調子で、反日ムードを煽って2012年のような暴動が起きてしまったら、これらの地域経済の活性化はすべてパア、従業員2000人の生活も大ダメージだ。
その不満はそのまま「体制批判」になってしまう恐れもある。また、あまりの反日ぶりでイオンやテナントに入る日系企業が、内陸部進出に腰が引けて、成長著しいタイやベトナム、インドネシアへと逃げられてしまっても中国共産党は困ってしまう。
アニメイベントや浜崎あゆみさんのコンサートを中止にすることは関係者にとっては大打撃だし大迷惑だが、中国経済的にはそれほど痛くない。親日の中国人ファンががっかりして、中には共産党批判をするような人も出るかもしれないが、その影響は限定的だ。
しかし、イオンモールとなると、これまで見てきたように影響は甚大だ。だから、叩きたくても叩けない。日本企業でありながらも中国経済、しかも政府が期待する「内陸部振興」にも関わるキーマンなので、アニメイベントやJ-POPコンサートのような圧力をかけることができなかったというわけだ。
中国依存脱却は理想論
イオンの成功に学ぶべきこと
さて、このような話を聞くと「やっぱりイオンは親中企業じゃないか!」と思う人も多いだろうが、筆者はグローバル企業が現地の政府と協力しながらビジネスを展開するのは当たり前のことであり、むしろ今の問題を解決するヒントがあるとさえ考えている。
今、日本のいたるところで「中国依存から脱却して中国の圧力を跳ね返せ!」という勇ましい声があふれている。確かに貿易での依存度は度を超えているし、もともと観光立国は「多様性」が求められるので、欧米豪など他の国からの観光誘致に力を入れるのは大賛成だ。
しかし、地政学的には日本と中国は切っても切れない関係にあるのも事実だ。日本の愛国心あふれる人々はどういうわけか世界と異なる「親米右翼」なので、中国と国交断絶して没交渉になっても、アメリカ様がなんとかしてくれるという話になりがちだ。
だが、今の日中問題に首を突っ込んでこないことからもわかるように、アメリカにとっても中国は非常に強大な「ビジネスパートナー」なのだ。もし仮に日本側が「中国の横暴が許せないので、これからは日米で協力して中国を追いつめましょう!」と鼻息荒く迫っても「まあまあ、そんなカッカしないで隣国なんだから仲良くしなよ」と諌められるのがオチだ。







