結果をコントロール可能な
投手を抱き込めば必ず勝てる
野球の試合を頭に思い浮かべて欲しい。野手が守備に付き、打者がバッターボックスに入り、試合開始の「プレイボール」の声が審判からかかる。この瞬間から試合が始まるが、最初の動作は投手がバッターへボールを投げることだ。野球の試合は投手がボールを投げない限り始まらない。
投手が投じた球がボールになった時、その投球が故意によるものか偶然によるものかは判断しづらい。しかし、物理的には投手はわざとボール球を投げることができる。
ならば、この時に投手がボール球を投じることに賭けた場合、リスクがない。
スポーツ賭博においてプロ野球の投手が狙われやすいのは、ゲームの流れと結果を最も直接的に左右できる「戦略上の中核的存在」であるからだ。
野球は投手によってゲームのテンポ、点の入り方、試合の展開がほぼ決まるスポーツである。サッカーやバスケットボールのように複数の選手が同時にボールに絡むのではなく、野球では1対1、つまり投手対打者の勝負が何度も繰り返されている。
この構造において、ストライクをわざと外す(四球を与える)、意図的に甘い球を投げる(ヒットを許す)、プレートを踏み外してボークを誘発する、守備との連携でミスを装う、などができてしまう。
投手はこのような形で結果をコントロールできるのだ。個々のプレーは故意のエラーには見えにくいことが多く、発覚しづらい。このため、投手は賭博組織にとっては極めて効率のよいターゲットになってしまう。
確率を変えられる立場にある投手は、ハンデの操作が可能となる。スポーツベッティングでは「スプレッド(点差)」や「トータル(合計得点)」に対しても賭けが行われているが、現在はマイクロベット(細分化された賭け)が存在し、投手が1人で結果を左右しやすい状況が増えている。
特にライブベッティングの普及により、「5回までに○点取られるか」「今からの1イニング」などに特化した賭けがあり、投手が一瞬気を緩めるだけで結果を操作できるという誘惑にさらされやすくなっている。







