物的証拠が残りづらい
サッカーの八百長

 イタリアサッカー界は、2006年の「カルチョポリ(Calciopoli)」の後、2012年に「カルチョスコメッセ(Calcioscommesse)」と言われる大きなスキャンダルに再び見舞われた。

 2011-2012年シーズンに発生したこのスキャンダルは、2011年6月1日に、多くのサッカー関連の人物が試合で不正をはたらいた疑いでイタリア警察によって逮捕、または公式の捜査下に置かれた後に発生した。

 リストには、元イタリア代表サッカー選手のジュゼッペ・シニョーリや元セリエA選手のマウロ・ブレッサン、ステファノ・ベッタリーニ、クリスティアーノ・ドーニなどの有名な人物が含まれていた(The Guardian:More than 50 arrests made in Italy as part of football match-fixing inquiry、2015年5月19日)。

 犯行グループは、セリエB、レガプロプリマディヴィジオーネ(3部)、レガプロセカンダディヴィジオーネ(旧4部)の幅広いゲームを操作していた。

 この捜査は、レガプロプリマディヴィジオーネのクレモネーゼからの告発を受けて始まった。疑惑の中心にいたのは、2011年1月にベネヴェントに移籍した元クレモネーゼのゴールキーパー(GK)、マルコ・パオローニだった。

「カルチョスコメッセ」は奇妙なことから発覚した。

 最初は選手の体調不良が問題となった。3部のクレモネーゼ対パガネーゼの試合が行われた際、試合中にクレモネーゼの数人の選手が体調を崩し、プレーすることが困難になった。検査した結果、飲み物に向精神薬(睡眠薬のようなもの)が混入されていたことがわかった。

 八百長事件においてはほとんど物的証拠が見つからないことが多いのだが、クイド・サルヴィーニ検事が起訴したこの事件には珍しく物的証拠があった。盗聴されて首謀者の1人と発覚したのがクレモネーゼのGKだったマルコ・パオローニである。

妻を人質に取られて
犯罪に加担したゴールキーパー

 サッカーにおけるGKは特殊なポジションだ。単独でも試合結果を左右することができる。先述した野球の投手に類似している。