世界が見ている中国の姿――「恥ずかしい」と語る知識層

 このような目に見える「被害」以上に深刻なことがある。

「今回の騒動で、世界がどう中国を見ているのかが懸念事項です」と、北京の大学で国際関係を専門に教える知人は、不安そうにそう話す。

「日本関連のイベントを中止したり、日本への渡航を止めたり。そして、わが国の外交官が手をポケットにつっ込む姿(編注:日中の外交局長会談で、中国外務省アジア局長が両手をズボンのポケットに突っ込んだままで、日本のアジア局長と相対する場面が報じられ、写真が拡散した)なども、実は一中国人としてとても恥ずかしい思いをしているのです。

 やっているほうは気持ちがスカッとするかもしれないですが、後味が悪すぎます。我々中国には、『傲慢は強さを意味せず、謙虚は弱さを意味しない』という言葉があります。この言葉が示すとおり、誰の株が上がったのか、一目瞭然でしょう」

「アメリカとの貿易摩擦も含めて、わが国はいつも国際舞台で『屈しない中国』とアピールしますが、しかしその『強い顔』の裏では、一般市民がさまざまな不利益や負担を受け入れるといったツケが回ってきます。わが人民も我慢強いからです」と続けた。

 さらに、別の上海の知人は、今回の「歌手の公演停止」は象徴的な出来事であり、上海という国際都市としてのイメージが傷つき、外資企業が撤退する動きにつながる可能性があると指摘した。「もともと景気が低迷しているのに、踏んだり蹴ったりだ」と心配そうに語った。

ロシアからビザなし入国と30日滞在が許される

 最後におまけ話を。12月1日、ロシア政府は中国国民に対し、「中国のパスポートを持つ国民は、ビザなしでロシアに入国し、観光やトランジット目的などのために最長30日間滞在できる」と発表した。

 これを受けて、中国のSNSは荒れた。

「行きたい国に行かせてもらえない、行きたくない国に行かされる、しかも戦火中の国」
「ロシアと日本は同じレベルの国とでもいうのか?笑えた……」

 これを受けて、先日、中国のSNSでバズった、皮肉たっぷりのギャグがある。

「旅行ならロシア、出稼ぎはミャンマーへ、商売するなら北朝鮮、留学はイランへ」

 自虐的過ぎるきらいはあるが、選択肢のなさや社会の閉塞感など、中国人が現在置かれている社会状況をうまく表現できている……かもしれない。

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