宇宙の「軍事化」が進むと、軍事的緊張が高まった際に、対立する相手の衛星によって偵察され、監視されている状態であるのは望ましくないですし、もし戦争になった場合、相手の測位衛星を破壊したり、無力化することができれば、相手の軍事的な能力は相当落ちることになります。

 そのため、例えば中国は、台湾有事の際に米軍が介入するようなことがあれば、米軍が使っている衛星を破壊し、その能力を下げさせることができるのだと示すことで、米軍の介入を未然に抑止するということを狙っていると考えられます。

 2021年11月にロシアが同じくASAT実験を行ったのも、そうした意味合いがあると思います。ロシアのASAT実験は、ウクライナに侵攻した時、米軍やNATO軍が介入するようなことがあれば、衛星を破壊して、戦闘能力を下げさせることができるから、介入するな、というメッセージでした。

衛星とデブリの衝突はすでに
観測されている

 NASAが公開している宇宙空間にある観測可能な物体数のグラフ(図3)では、この数字が2007年に劇的に上昇しています。これは、中国による衛星破壊実験の結果増えたデブリが原因です。2009年にもまた増えているのですが、これはロシアの寿命を終えた衛星(ゆえにコントロール不能)とアメリカの商業通信衛星が衝突して生じたデブリです。

 衛星とデブリ(寿命を終えた衛星もデブリ)の衝突は他にもいくつか事例がありますが、おそらく2009年の衝突が最も規模が大きく、デブリの量も多い衝突だったと思います。

図3:宇宙空間で観測された物体数同著より転載 拡大画像表示

 デブリは大きければ大きいほど、衝突して破砕された場合に破片が多くなるので、デブリを除去する際には、大きなデブリから取り除くというのが基本的な考え方となっています。