その後、2020年代に入ると物体数が急速に増えるのですが、これは稼働中の宇宙機の機数の伸びと一致しています。つまり、スターリンクなどが急速に衛星の数を増やした結果、宇宙空間の物体も増えているというのが、この2020年代だと思います。今、宇宙空間はとにかく混雑している状態にあるということです。

 このように、宇宙空間は非常に混雑した状態で衝突リスクも高まっていて、2009年には実際に衝突が起きています。また、宇宙システムの社会経済的な価値は高まっていますし、同時に軍事的な重要性も増大しています。宇宙空間は脆弱で、混雑していて、衝突のリスクがあるけれども、とても重要である。このような非常に難しい状況に私たちは置かれているのです。

各国の合意が形成できないなかで
日本政府が打ち出した突破口

 宇宙空間において、ルールをつくることが極めて難しくなってきています。アクターの利害が入り乱れ、互いが安全保障を盾にとって、譲歩する気配がありません。宇宙空間ではデブリが爆発的に増加していますし、意図的と疑われる「攻撃」も起こっています。

 では、国際的な合意ができない中でどのようにルールをつくっていけば良いのでしょうか。

 実は、日本は国際的なルール形成に向けて新たなアイディアを出しています。それは、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が策定した「軌道上サービスを実施する人工衛星の管理に係る許可に関するガイドライン」というものです。

 日本の民間企業であるアストロスケールがJAXAとともに、CRD2(商業デブリ除去実証、Commercial Removalof Debris Demonstration)と呼ばれるプログラムにおいて、デブリ除去を民間事業として行おうとしています。アストロスケールは既にADRASJという衛星を打ち上げてデブリの観測を行っていて、2027年度以降に再度衛星を打ち上げてデブリを除去するという計画が進んでいます。

 このようなプロジェクトを実施するのは日本が世界で初めてであり、デブリ除去の技術では日本が世界の先端を走っています。そして、CRD2が成功すれば、世界で初めての大型デブリ除去の事例をつくるのは日本となり、これが先行事例となるのです。