日本発のガイドラインが目指す
今後のシナリオとは?

 他方、この軌道上サービスを行う人工衛星に関するガイドラインは、透明性と信頼醸成措置(TCBM)をふんだんに盛り込んだものにもなっています。デブリ除去ができるということは、他国の衛星を捕まえて除去できてしまうということです。

 ですから、それが起こらないように、デブリを除去する衛星が他国の衛星を攻撃しないことや、その移動経路やタイミング、デブリ除去の方法など、検証可能で詳細な情報をとにかく高い透明性を持たせて提供することによって、他国に対して安心と信頼を供与していく必要があります。

 そのような高いスタンダードで透明性を高めるルールを日本がつくり、それを日本自身が実行していけば、他国があとから抜け駆けできないベンチマークになります。はじめは一国単位でのルール形成かもしれませんが、それを今後の普遍的なルールとして定着させることを目指しているのが、日本のガイドラインなのです。

 こうした技術的な優位性を国際的なルール形成能力に活かしていく事例が、この宇宙の分野で多く起きています。それこそがまさに、地経学的パワーなのだろうと私は思っています。