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野村證券が1月26日に打ち出した、営業社員への「信用情報の提出要求」の直後、情報の開示元である指定信用情報機関のCICが即座に異例の注意喚起を公表した。CICは会社が社員に信用情報の提出を求める行為そのものに警鐘を鳴らし、提出を求められた社員側には安易に要請に応じないよう求めている。連載『金融インサイド』の本稿では、CICと野村證券の双方に取材し、不祥事の再発防止策が新たな火種へと発展した内幕を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
社員の信用情報を求める会社にCICがコメント
要請を受けた社員が提出を控えるべき理由とは
多額の借金を抱えた野村證券の元社員が顧客の夫婦宅から現金を奪って放火したとして起訴され、強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪に問われている。2024年7月に起きたこの事件を機に、野村證券は顧客訪問時の管理を徹底するなど、不祥事の再発防止策を次々と講じてきた。
だが実は、不祥事の再発防止策の中には、野村證券が今も世間に公表していない施策がある。指定信用情報機関のシー・アイ・シー(CIC)を利用して営業社員に信用情報の提出を求める、事実上の“借金調査”である。
CICはクレジット会社の共同出資で設立された信用情報機関で、割賦販売や消費者ローンなどのクレジット事業者が加盟している。下図のように、個人でも情報開示を求めればクレジットやローンの契約内容、支払い状況、残債額、200~800の数値で示される信用指数など、自身の信用情報やクレジット・ガイダンス情報を閲覧できる。
この開示制度に目を付けた野村證券は25年以降、主にウェルス・マネジメント部門(旧営業部門)を対象に、部店長や内部管理責任者、担当部長、統括課長、ポスト課長などの管理職へ順次案内した。これらの管理職はすでに信用情報開示報告書の提出を終えている。
そして26年1月26日、ついに非管理職の営業社員にも、厳秘扱いで提出要請が出た。
ところが翌27日、信用情報の第三者提供に関する注意喚起をリリースし、トップページのバナーでも注意喚起を大きく掲げたのが、野村證券が信用情報の開示先として指定したCICだった。
CICは以前から、信用情報を第三者へ安易に提供すると不測のトラブルにつながる恐れがあるとして、ホームページや信用情報開示報告書で注意喚起を行ってきた。1月27日のリリースで、改めて注意を促した格好だ。
ダイヤモンド編集部は、野村證券が営業社員に信用情報の提出を求めたタイミングで注意喚起に踏み切った背景に加え、会社が社員に信用情報の提出を求めることの是非や、信用情報を求められた社員側の留意点についてCICに確認。野村證券にも、CICの方針に沿った取り組みかどうかについて聞いた。
これに野村證券は「CICの利用規約も含め、適切に検討した上で本施策を実施している」と回答した。しかし、当事者であるCICの見解は大きく異なる。
信用情報の提出を社員に求める会社に対して警鐘を鳴らしたのだ。さらに利用者(社員側)に対しても慎重に判断するよう呼び掛けるコメントを寄せている。
次ページでは、CICが1月27日にリリースを出した背景や、会社側と社員側それぞれに向けて示した見解を公開する。併せて、社員が信用情報の提出要請に軽々と応じるべきではない理由を、CICの見解を基に明らかにする。








