そこで渡邊理恵子さんがこだわったのは、ダッシュボードの見やすさ。メンバーの中川真帆さんとともに画面を断捨離するように整理していったという。「誰が見ても分かる形にしておかないと、理解や説明に時間を取られてしまう。これも立派な業務効率化です」(渡邊さん)

パナソニック くらしアプライアンス社 CS-DX推進部 第一課 主幹 渡邊理恵子さんパナソニック くらしアプライアンス社 CS-DX推進部 第一課 主幹 渡邊理恵子さん Photo by M.S.

 こうした地道な改善によって、浮いた時間をデータ分析や改善施策に注げるようになった同社。2019年版「デジタルサポートランキング(家電部門)」では1位に返り咲いた。2025年現在も、6年にわたってトップを維持している。

若手社員とAIで、SNS分析が2カ月から2日に

 FAQサイトの分析業務が劇的に効率化された一方で、顧客満足度向上のため、もう一つ強化したい領域があった。SNS分析だ。

 2022年、SNS分析を担当していた当時新卒2年目の堀口武志さんは、楽天やAmazonのレビュー、SNSを一つ一つ目で見て分類していた。例えば掃除機なら、「吸引力に対するポジティブなコメントは何件か」を全て手作業でカウントする。商品企画への報告まで2カ月かかっていた。

「皆さん優しいから言わないけれど、毎回『遅い』と思われているんだろうなと思っていました」(堀口さん)

パナソニック くらしアプライアンス社 CS-DX推進部 第一課 SNS分析担当 堀口武志さんパナソニック くらしアプライアンス社 CS-DX推進部 第一課 SNS分析担当 堀口武志さん Photo by M.S.

 そんなとき、ChatGPTが登場した。学生時代に情報学を専攻していた堀口さんは、プログラミングの知識を生かし、ChatGPTとDomoを活用することで、SNS上のコメントを自動的にポジティブ・ネガティブに分類。2週間かかっていた作業を2日に短縮した。

 一方で、まだ社歴が浅い堀口さんには、マーケティング担当者や商品企画担当者がどのような情報を求めているのかが分からないという悩みがあった。他部署とどう連携していけばよいか分からないときは、堀田さんが同社勤続30年超の経験を生かしてアドバイスした。堀口さんは、「困ったら堀田さんがサポートしてくれるので、自分の勉強してきたことが生かせている」と語る。

 スピードアップにより、分析対象も広がった。従来は理美容商品の2部門のみだったが、2024年3月からは調理商品、家事商品など5部門に広がり、今後も増やす予定だという。