200万ドルの寄付によって
200倍以上の幸せが生まれることに

 実は、強力な科学的知見がもう1つあった――利他と幸福の強い相関を示すさらなるエビデンスだ。

 私たちは、実験参加者が過去に行った高額の出費について、それぞれどのくらい幸せを感じたか、振り返ってランク付けするように頼んだ。

 以下のグラフはその結果を示したものだ。横軸の0.0は平均幸福度を、正の値は平均より高い幸福度を表す。

図表:幸福度と出費先同書より転載 拡大画像表示

 寄付は個人的な出費より有意に高い満足度をもたらしていることがわかる。

 不思議の実験の最も驚くべき知見の1つは、2022年後半にProceedings of the National Academy of Science(PNAS)に掲載された論文に述べられている。

 論文では、匿名のカップルの寄付によって、その200万ドルがカップルに個人的にもたらしただろう幸福度の200倍以上の幸福が生まれたと推定している。

 この論文は、富裕層がみずからの資産を利他的に活用すべきだとする主張の、最も強力な論拠の1つとして引用されている。

利他の心を持っていれば
自分も他人も幸せにできる

 この点を少し考えてみよう。利他が幾何級数的になったときにどんな力が生まれるのかを、はっきり示しているからだ。

 もし寄付者のカップルが実験に資金提供する代わりに、お金を手元に置くことにしていたらどうだったか?

 もちろん、2人は経済的により安定しただろうということは間違いなく、それは大きなことだ。2人とその直接の家族は、数年の間、満足度がいくらか高まっただろう。

 だが、実験を進めたことで、彼らは次のようなことが起きる力となったのだ。