セーラは言う。
「ほとんど毎日、自分が資金提供した何かの横を通るんです。3Dプリントで作られた地域のミニフードバンクとか、地元の学校の外にある花壇とか。受け手の多くの人たちから、お金だけでなく、自分の仕事がみんなに認められたことが心強かった、という話を聞きます。
このプロジェクトのおかげで、自分が大切に思ってきたもの――コミュニティ、ケア、喜び、利他的に行動すること――を他の人たちも大切にしているということを、そして自分自身を信じるべきだということを、あらためて思いました」
米国のカーク・シトロンはこう言う。
「自分の趣味に使おうなんて考えるまでもなく、結論はすぐに出ました。『不思議の実験の寄付者が200万ドル提供できるなら、自分も間違いなく1万ドル提供できる』と。だから『恩送り』することにしたんです。
(自分で選んだ団体である)ヒューマニティ・ナウに、マッチンググラント(注1)として寄付し、他の人たちにも同じように『恩送り』してほしいと呼びかけました。大勢が加わってくれて、合わせて2万7000ドルの寄付ができました。利他は利他を呼び寄せるんです」
このように、寄付者の利他に対して自分も利他で呼応したいという強い気持ちを感じたと、具体的にコメントする人たちがどれほど多かったかは驚きだった(参加者がそうしなければならないという公式の義務はまったくなかった、ということは明確にしておきたい。彼らは自分の決めたとおりに使うことができると言われていた。そして、匿名の寄付者から後でまた連絡が来るかもしれないと考える理由もなかった)。
こうしてこの実験は、利他に対して自分も利他で呼応したいという傾向がどれほど強固かを示す、最も説得力のある科学的エビデンスを提供した。
先行実験の大半は、心理学専攻の大学生に少額のお金が贈られた場合に基づいていた。今回の実験は、贈られた額もはるかに大きく、複数の国で行われた最大の実験となった。
どの文化でも、どの収入レベルでも、人は利他に対して利他で呼応したのだ。
(注1)ある団体が寄付などで集めた資金に対して、助成団体や企業などが同額あるいは一定の比率で資金提供する仕組み。







