資金不足を解消できず
事業規模を下方修正

 マヤは自分の時間の半分を資金集めに費やし、何らかの資金提供の申し出を確保するのに、平均10回のミーティングをしなくてはならない。

 その上、そうした資金提供は通常3年未満で、資金の使い道に多くの制約がある。

 だんだんとマヤは燃え尽きていく。正気を保つために、構想を小さく切り詰めていくことにする。

 世界中の人を支援するのではなく、地元の街の人へのサービスの資金として500万ドルを提供してもいいという人を見つける。マヤは、地元の数百人がその後数年間サービスの恩恵を受けられるという事実から、せめてもの慰めを得る。

 サービスは、社交辞令として資金提供者の名前を冠してリブランディングされた。残念ながらこの規模では、活動に本来備わっている効率を本当の意味で発揮する機会は得られない。

 世界中で無数の人が、手を差し伸べる手段を生み出した人の存在などまったく知ることなく、自分1人で危機に立ち向かうことになるだろう。

社会を変える力があっても
非営利団体の壁に苦しんだ

 2つのストーリーがこのような違う結果になっているのはなぜなのか?

 非営利のプロジェクトが大規模に変化を生み出せない本質的な理由などない。プロジェクト自体の利益で自己資金を賄うことはできないかもしれないが、それでもグローバル経済の力や政府の支援、あるいはインターネットのリーチを活用できる方法はいろいろある。

 だが現実では、営利団体が多額の資金を集めるために持っているツール、すなわち複数年にわたる投資が非営利団体には使えない。非営利のプロジェクトの資金は、1人の寄付者から1年ずつ提供される場合が多すぎる。

 このプロセスはきわめて非効率で、もどかしいことが多い。

 それは社会起業家にとってだけではない。寄付者――多くは、前例のない個人資産を最近獲得した人々――も、際限のない資金提供の要請をうっとうしく感じている。

 フィランソロピーを通じて世界を変える活動をしたいと心から願っている可能性があるのに、資金提供したい画期的なアイデアと出会う市場が整っていない。