実はこのサービスは、困難な状況において必要不可欠な支援を提供することで人々の生活を一変させられるものであり、キャロル・キングの歌にちなんで「You've Got a Friend(君の友だち)」と名づけられていた。

 絶望感に襲われたときは、アプリを開いて次に挙げるものを探す。

・証明済みの心理学的知見に基づいた、苦悩への強力な対処法
・年中無休のカウンセラーをはじめ、さらなる支援を求めて連絡できるさまざまな地元のサービス

投資家たちの目には
事業は拡大しないと映った

 だが、マヤには乗り越えなければならない決定的な課題がある。彼女がサポートしようとしている人たちの大半は貧困の中で生きており、このサービスの全コストを支払う余裕がない。

 サービスはどの街でも、専門的なトレーニングを受けたボランティアによって提供されている。いずれは行政や当事者の雇用主が費用の支払いを引き受けるかもしれないが、その説得には何年もかかるだろう。

 マヤのビジネスプランを見ると、大規模に展開する機会を得るには、5年で1億ドルの資金を集める必要があるだろうということがわかる(実はマーカスが必要とした資本と同額)。

 その資金をどうやって集めるか?

 アプローチできるベンチャー・キャピタリストはいない。彼女が使えるような公開株式市場に相当するものもない。資金集めの頼みの綱は、非営利団体を設立して、さまざまな財団や個人フィランソロピスト(編集部注/自主的に社会貢献活動を行う人)に個別にアプローチしていくことだ。

 幸先は良かった。問題に関心を示す人は大勢いて、ぜひ始めるようにと励まし、彼女のモデルは有効だと保証してくれる。また、貧困とメンタルヘルス領域の特に関心のある側面について、試行のために資金提供を申し出る人たちもいる。

 2~3年後に数百万ドルの資金が集まり、個人的な危機のために陥った貧困の罠を打ち砕くのに、アプリが本当に有効であることが証明された。

 だが、このプランを積極的に拡大するリスクをいとわない人が、なかなか見つからない。