最初に国民の立場をまとめてみましょう。物価高で生活に困っているのは確かです。ひとりあたり3000円還元してくれる財源があるのであれば、そもそも税金を3000円減らしてくれるのが一番いいはずです。

 それと比べて「おこめ券3000円」が配られるのは国民の視点でみると不効率な点がたくさんあります。ひとつは3000円のおこめ券は実際に店頭で使う際には2640円にしかなりません。

 おこめ券は500円券の場合、440円でしか使えないと券面に明記されています。理由はおこめ券を印刷したり管理したりするためのコストが60円かかるからです。この60円はおこめ券を発行する全米販ないしはJA全農の取り分になります。

 さらにそのお米券を自治体が購入して各世帯に郵送するための費用が、世帯あたり数百円かかります。

 政府がナニナニ券のような紙の商品券を配るのを好むのは、バラマキの際にこうやって間に入るさまざまな業者を潤すことができるからです。一方で国民からみれば、それは税金を使った選挙対策じゃないかと反感を感じるわけです。

 つぎに自治体の立場ですが、これは実は後述する理由でふたつに立場が大きくわかれます。まずはそのうちのひとつに寄った例として、おこめ券に反対表明した交野市の山本市長の立場を整理してみます。

 地元有権者の評判を調べると山本市長の魅力は「頭がいいこと」で、どう頭がいいかというと「徹底した合理的判断」にあるそうです。

 今回の例ではこういうことです。市民が物価高で苦しんでいるときに、政府から交付金が給付されることになりました。交野市の場合は合計5億円の交付ということですが、これをどうすれば一番低コストで家計を助ける形で配布できるのかを交野市長が考えたのです。

 そして出た答えが「水道料金を値引く」でした。

 これは交野市からみれば上下水道料金のシステム上で請求を減らすだけですから、簡単なプログラムで解決します。印刷費用も郵送費用も残業代も発生しません。山本市長によればおこめ券配布なら20%以上かかる配布コストが、水道料金をさわるだけなら0.7%で実施できるそうです。