すなわち、“社会の中で存在していくために模索し始めること”をルソーは第2の誕生と呼んでいるようだ。しかし、「社会の中で存在すること」と「社会の中で自分の生き甲斐や生きる意味を追い求めて生きること」を、冒頭のオスカー・ワイルドの言葉のように区別するのならば、多くの人は“生きて”いくために、3度生まれなければならないだろう。20歳前後で始めた仕事や生き方が、自分に生涯、生き甲斐を与え続けてくれることなんて、多くの人にとっては滅多にないことだからだ。
20歳前後で、ともかく自分なりに社会の中で生存していけるように頑張り始めるのが2度目の誕生で、社会で生存していけるようになるだけで満足してしまえばそれまでだろう。だが、それが達成できた段階で、社会の中でただ存在しているだけでなく、生き甲斐ある人生を生きたいと思う人は、3度目の誕生を果たさなければならない。
このままの自分でいいのか…
将来が不安になった時の対処法
出会った時の桃井さんはまさに、3度目の誕生を果たそうとしていた時期だった。私にも40歳になる頃、3度目の誕生へのもがきがあった。私の周りを見ると、「今までやってきたこととは違うことをしたい」と感じるのは、“子供が社会人になって巣立っていった”あるいは、“定年が目の前に見えてきた”50代や60代になってからという人が多いようだ。
「このままの自分でいいのか」が高じて、「将来が不安だ」という気持ちで一杯になってしまう状況を“ミドル・ライフ・クライシス”等と近年呼んでいるようで、それへの対処法に関する記事等も、少しずつ増えてきている。
「手帳に1日1行、ちょっとしたことでいいから、その日にあった楽しかったことや嬉しかったことを書いていくことで、日常の中の自分を肯定すること」や、「好きなものと嫌いなものを書き出して、自分の心の中を少しずつ客観的に見ながら自分を鼓舞すること」が推奨されている。自分を肯定し鼓舞することが肝心なので、敢えて辛かったことや悲しかったことは無視して書くべきではないそうだ。







