名指しされたわけではありませんが、チーム内で子育て中の社員は自分だけです。サトミさんは次第に追い詰められていきました。
やがて、サトミさんは転職をする覚悟で人事部に状況を伝え、マネジメントの改善を求めることにしました。相談を受けた人事部が、サトミさんとアベさん双方へのヒアリングを行うと、次のような事実が確認できました。
・チーム全体のオープンチャットで複数回、おおむね週に1回程度の割合で、アベさんが匿名の誰かを揶揄するような発言をしている。
・2人のダイレクトチャットでは、アベさんがサトミさんに「もっと訪問先を増やせないのか」と問い、そのたびにサトミさんが謝罪をしているやりとりが、入社1ヵ月経過後から始まった。「言い訳をしないでほしい。あなただけが大変なわけではない」といったやり取りが週に1、2回程度発生している。また、他の社員に比べ、2人の直近1ヵ月間のメッセージの頻度・回数は5倍ほど多い。
・入社からの期間が短いため、サトミさんの行動について、実際に人事評価に反映された実績はない。
人事部は、確認できた事実に基づき、オープンチャットでのアベさんの言動は「パワハラとまでは言えない」と判断しました。よって、懲戒処分を科すことはしませんでしたが、「サトミさんへの揶揄と取れる発言を慎むこと」を誓約する文書の提出を、アベさんに求めました。また、チームメンバー全員に対して品位ある言動をするよう注意しました。
一方で、サトミさんにもアベさんの指導方法を否定せず、謙虚に受け入れる姿勢を示すこと、また、育児介護休業法に定める「時間外労働の制限」を正式に申し出てもらうようにしました。そして、1ヵ月について24時間、1年について150時間の範囲内での残業には協力するよう求めました。
容姿いじりされたストレスで
「過敏性腸症候群」になり休職
<ケース2>嫌がっていることに気づかず、容姿についての冗談を繰り返す先輩







