例えば、「周囲に迷惑をかけたくない」「評価に響くのではないか」「相談しても何も変わらない」という不安は、多くの労働者が抱える共通の心理です。
加えて、上司との力関係、同調圧力、業務の属人化、相談窓口の不信などが複雑に絡み合い、声を上げること自体が困難な状況を生みます。真面目で責任感があるほど、こうした状況を作り上げてしまった自分を責める傾向があるので、組織には早期に声を上げられる仕組みづくりが求められています。
<このタイプの特徴>
・組織的な問題(上司の指導姿勢や制度不備)も「自分が至らないからだ」と思い込み、改善要求に踏み出せない。
・期待に応えようと過剰に努力したり、相手の言動を正当な指導と誤認しやすいため、ハラスメントを受けていても表面化しにくい。
・声を上げること自体への心理的なハードルが高い。
毎週のように朝礼で叱責され
夜にゆっくり眠れなくなった
<ケース1>過大なノルマに応えようとするうちに、精神疾患を発症した社員
私は人材サービスの会社で営業として働いています。給与は歩合制で、ノルマがあることも理解できるのですが、どう頑張っても達成できそうにない件数を求められています。達成すればかなりの報酬を受け取れるので、トップ成績の同期は私の倍の収入を稼いでいるようです。
「達成できる人がいるんだから、できないやつは努力が足りない」と毎週のように朝礼で叱責されます。「他社で通用すると思うな」と言われると、怖くて転職もできません。最近は気分の落ち込みが強く、夜にゆっくり眠ることができなくて仕事に支障が出ています。社内のカウンセラーに相談したら、仕事のストレスでうつ病になっているのではと言われました。これは労災になるんでしょうか。コウタ(20代・男性)
「達成できる人がいるんだから、できないやつは努力が足りない」と毎週のように朝礼で叱責されます。「他社で通用すると思うな」と言われると、怖くて転職もできません。最近は気分の落ち込みが強く、夜にゆっくり眠ることができなくて仕事に支障が出ています。社内のカウンセラーに相談したら、仕事のストレスでうつ病になっているのではと言われました。これは労災になるんでしょうか。コウタ(20代・男性)
コウタさんの状況は、過大な業務目標の強制と人格を傷つけるような叱責が重なっており、心身に明確な不調をきたしている点で、非常に深刻だと推察します。まずは、心療内科などに相談し、場合によっては休職も検討してもよいのではないでしょうか。
一方で、この心身の状況の原因が「労災」にあたるか、つまり業務に起因性があるかの判断は調査が必要です。もちろん精神障害の労災認定基準にはパワハラによるものも含まれます。







