終身雇用が崩壊して労働者が流動化するいま、どこの職場でも、部下の心をつかむマネジメントが求められている。リーダーはどのような社内コミュニケーションを目指すべきか、企業研修のプロコーチが語る。本稿は、林 友香『リーダーを目醒めさせるキラー・クエスチョン 女性トップコーチが斬り込む「39の質問」』(かざひの文庫)の一部を抜粋・編集したものです。
職場のハラスメント対策は
日々の人間関係の構築があってこそ
あなたが今までの人生で、「この人のためにも頑張りたい」と思った上司やリーダーはいましたか?もしいたとしたら、その上司はあなたにどんな関わりをしてくれる人でしたか?
私自身は今振り返ると、「この人のためにも頑張りたい」と思ったリーダーは、私以上に長い目で、仕事だけではなくプライベートも含め、私の人生を自分ごとのように考えてくれた人でした。
その人は、それを言ったら嫌われるだろうということさえも、嫌われることを恐れずに、私に堂々と伝えてくれた人。重要なのはあなたが部下やメンバー以上に、彼らのキャリアや人生を長い目で見て大切に考えているかどうかです。
あなたの部下やメンバーは、家族や友人に「職場の上司」すなわち、あなたのことについてどんな風に話しているでしょうか。
「上司は横柄で自分勝手な人間で、ほんと困っちゃうよ」「今のリーダーは一見怖そうだけど、意外と優しいところがあるんだよな」。メンバーのリーダーや上司に対する「本音」が現れるのはこういう瞬間です。
ハラスメントの境界線がますます難しく曖昧になり、職場の人間関係や部下との関わり方に悩むリーダー・管理職の方がとても増えています。
難しいのは、会社側がどんなにわかりやすく、明確なルールを打ちだしても、そこに人が介在する以上、「パワハラを受けた」と感じるボーダーライン・境界線が相手によっても、その関係性によっても違うことです。
日々の言動の中で、何ができていればハラスメントにならずに、何ができていない状態であればハラスメントになるのか。いかに日常の職場での関係性が大切かということを、リーダーは今まで以上に理解している必要があります。
「やる気あるの?」
リーダーから部下へのたった一言。どんなに一生懸命取り組んでいても、思うような結果を出せない時もあります。そんな時、普段から自分のことを気にかけてくれているリーダーから言われる一言と、いつもろくに関わりもせず、横柄な態度で信頼できないリーダーから言われる一言では、受け取る側の感情は大きく違います。
その言葉をどう受け取るかは何で決まるのかというと、言葉そのものだけではなく、リーダーと当事者であるメンバーとの関係性によって決まるのです。
「どれだけふたりの間に信頼関係がつくられているのか」「リーダーの言動に、愛を感じられるのか」。