現状、コウタさんは既にうつ病が疑われる状況とのことですので、労災かどうかという点よりも、まずは無理に頑張り続けないよう、心身の健康を整えることを優先してほしいと思います。休職やノルマのない職種への配置転換を申し出る方法もあります。「頑張りすぎている自分」を守ることを大切にしてください。

厳しい言葉や大声での非難は
指導ではなくパワハラ

<ケース2>上司の他責的な発言を無条件に受け入れ、被害を認識できない若手

 小さな輸入商社で働いています。私はもともと仕事ができるタイプではなく、入社直後から、電話を受けてもメモが不十分だったり、頼まれた仕事を忘れてしまうなどの問題を起こしていました。ただ、データ入力や処理は得意で、上司はそういうところを評価して仕事を割り振ってくれていました。私はいい環境で働けていると思っていましたが、その上司が昨年転職してしまいました。

 今の上司からは毎日のように「お前のせいで仕事が進まない」「みんなに迷惑をかけているのがわからないのか」「小学校からやり直せ」などとフロア中に響くような大声で叱責されています。私が悪いことは事実で、周囲のみなさんがこんなに教えてくれるのに……と情けなくて悲しいです。もう辞めるべきなのでしょうか。ハルト(20代・男性)

 仕事において、必要な範囲の指導は組織が円滑に運営されるために必要です。しかし、「自分が悪いから」と思えることであっても、繰り返される厳しい言葉や大声での非難が日常化しているのであれば、それは「指導」の域を超え、パワハラに該当する可能性が高いと考えられます。

 例えば、神戸市交通局の裁判(神戸地判令和3年9月30日)では、上司が部下に対して「ここは学校じゃない」「基本給に見合う働きをしろ」などと、人格を否定するような発言を大声で繰り返していたことが問題になりました。

 被害者はハルトさん同様に「自分が至らないから叱られるのは仕方がない」と叱責を受け入れていましたが、裁判所は「指導の名を借りた人格攻撃であり、就業環境を著しく害する違法行為」と認定しました。そして、神戸市に対して国家賠償責任を認め、上司の行為がパワハラに該当すると明確に判断しました。