母と私が最後まで一貫していたのは、「身体機能を維持するために、リハビリを最重視する」という考え方です。でも、これを病院にはっきり言わなければ、「何かあってはいけない」と安静にさせて経過観察する方針を取られてしまう。

 だから、主治医の方に「動けるようになったら、リハビリをさせてください」と伝えていました。また、病院や施設側の違和感にも敏感になり、希望を伝えることも大切だと思います。ただ、その前提は“前向きであること”。

 親の老いは、介護認定もありますが、場合によっては障害者手帳の申請も伴うことがあります。この時、行政や医療機関、介護施設などに疑問点や要望を伝えることも大切。担当者によっては、こちらから「やってください」と言わないと、動いてくれないこともありますから。疑問も要望も「空気を読まず」に聞く。わからないことを中途半端に納得しないでわかるまで聞いた方がいいです。

仕事をやめよう、断ろうと思ったことはある?

――介護体制のスケジューリング、投薬管理、行政や医療機関との話し合い、お母様のケア……介護でやることはたくさんあります。かなり負担がかかると思いますが、13年の介護生活の中で、仕事を辞めよう、断ろうと考えたことはありましたか?

 ちょうど母が「歩けなくなるかもしれない」と言われた2005年ごろ、私に3カ月間離島で撮影するドラマの話が来ました。母がリハビリ病院に入院中とはいえ、すぐに帰ってこられないところに長期間行くのは不安で、受けるかどうか迷っていたのです。

 すると、当時の事務所の社長が「市毛、親が死ぬのを待つのはやめろ。仕事をやりながら、親が元気になることを考えろ」と言ってくれたのです。まさにその通りだと思いました。私は仕事を受け、母はリハビリを頑張る。その間はいとこの妻に支えてもらい、仕事することを選ぶ。一種のかけでしたがそこから母の体調も上向いていきました。