それまでは私学からご家庭に直接、情報が行くことはあんまりありませんでした。学校と家庭の真ん中に塾があるのが普通だったのです。実際に併願プランを作る際にも塾の先生が主体となって組み立てるケースも多かったです。

 しかし、コロナ禍によって塾を通さずとも、直接保護者に情報が行くようになった。それで、親自身が自分で併願プランを考えるという動きになったのが、コロナ前後の大きな違いだと思います。

 昔は過去問の出版社の人間が取材を受けるとかセミナーをするというのはほとんどなかったんですが、ご依頼をいただくことがとても多くなりました。このように私も含めた様々な発信が巷に溢れるようにもなったのです。

 個人的には、中堅校と呼ばれる学校にも受験生が増えてきて、ご家庭がたくさんの選択肢の中から学校選びができるような状況になったのはとてもいいことだと思います。 

――今までは塾の先生がおっしゃることが一番確実であったのに、保護者自らが情報収集できるようになったために、選択肢が広がったのがメリットということですね。逆に、これのデメリットはありますか?

 今は受験情報にものすごく詳しい親御さんが多くいます。それも良し悪しで、ちょっと心配に思っているのは、そのことが逆に子どもにとっての選択肢を狭める可能性があるのではないかということです。

 先ほど申し上げたように、塾の先生が併願プランを決めていたというのは、ひとつの悪くないシステムだったわけです。やはり、塾の先生は学校のこともよくご存じですし、その子と同じくらいの学力を持った子をそれまでたくさん見てきているんですね。経験してきたサンプル数が親御さんに比べると桁違いに多いってことです。

 例えば、塾の先生であれば「その子の第1志望校がA校であるならば、併願校はB校・C校辺りになるかな?しかし、この子により合っているのはB校だろう」といったアドバイスができます。塾の先生が持つ膨大なサンプルを使って、子どもと校風の相性まで考慮して併願校に選んでいたのです。