日本人の安定志向は、現代でも個人の資産運用の傾向に表れている。株式などのリスク資産よりも、銀行預金や定期預金といった安全資産を好み、民間保険の加入率も高い。「万が一」に備える意識は極めて高いのが日本人。リスクを冒してまで将来のリターンを狙いたい人より、「手ひどい失敗はしたくない」と考える人のほうが多いのだ。
母親のリスク回避志向が裏目
結婚が恐ろしくて動けない
「リスク回避・安定志向」は、職業選択や結婚、出産といったライフイベントにも影響している。以前、「婚活」現場でこんな事例を目にしたことがある。
とある30代の未婚の女性が、結婚に向けて「婚活」に乗り出したのだが、本人以上に母親の注文が膨大だった。やれ「奨学金を借りている相手はダメ」だの、「地方出身の長男はダメ」だの、「正社員以外は論外」だの、「年収は○○円以上でないとダメ」だの……。相手の人柄や性格よりも、まず年収や会社名をチェックしてはハネていった。
愛する娘への思いやりなのかもしれない。その背景には、「人生一度きりの結婚、もし失敗したら娘の人生が台無しになる」という「リスク回避志向」も働いているのだろう。
だが、そうした忠告はすべて裏目に出た。もしかしたら、母親がハネた人物のリストの中に、彼女にとって素晴らしい相手がいたかもしれない。だが、前記のごとくあらゆる項目を挙げて、当てはまらない人物を排除していった結果、娘は誰ともカップリングできないどころか、結婚が恐ろしくて動けなくなってしまった。あらゆる「リスク」を遠ざけた結果である。
学習性無力感という言葉もある。何かにチャレンジしようとしても、そのチャレンジがことごとく腰を折られれば、人はやがて「無力感」を学んでいく。
確かに何のアクションも起こさなければ、大きな失敗もないだろう。だが失敗や挫折を味わわない代わりに、成功も得られない。やっていたら得られたはずのリターンも、そもそも投資をしなければ、得られるはずがない。
むしろ現代社会では、リスクを承知で行動を起こすこと以上に、何もしないでいる「停滞」のほうが、長期的にははるかに大きな「リスク」になっているにもかかわらずだ。







