その時の調査対象者は非正規雇用者に限っていたから、正直、経済的には不安定な女性が多かった。にもかかわらず、“結婚相手”には、自分よりはるかに上のスペックを求める人が多いことも印象的だった。
現実を知って行動を促すために
「婚活」というワードが生まれた
今でも覚えているのが、ある地方在住の30代の女性のことだ。非正規雇用で親と同居している、私の言う「パラサイト・シングル」だった。
彼女に「将来、どのようなライフプランを描いていますか」と尋ねたところ、
「将来的には、幸せな結婚をして、子どもを育て、子育てが終わったらボランティアをして、夫と旅行しながら穏やかに暮らしたいです」
という答えが返ってきたのだ。まるで絵に描いたような幸せな家庭像。だが、この人はそれをどうやって叶えるつもりなのか。素朴な疑問から、私は思わずこう尋ねてしまった。
「もし、結婚しなかった場合はどうしますか」と。
その瞬間、彼女は驚愕の表情を浮かべて、完全に言葉を失ってしまった。まるで予想もしなかった問いかけだったようで、その様子に焦った私はさらに質問をかぶせてしまった。
「あ、もしかして婚約者の方がいらっしゃるんですね?」
……その場の空気が一気に凍りついた。同行していた女性研究者から、あとでこってり注意されたのは言うまでもない。
『単身リスク 「100年人生」をどう生きるか』(山田昌弘、朝日新書)
貴重な話を聞かせてくださる方に対し、私の態度は不注意だった。だが、その一方で彼女の人生設計には、「予定通りにならないかもしれない可能性(リスク)」がまったく織り込まれていないことに驚いてもいた。
結婚できない(しない)かもしれない、子どもを産めない(産まない)かもしれない、夫が職を失うかもしれない、離婚するかもしれない、老後に困窮するかもしれない――。
そうした「リスク」は万人にある。だが、彼女はそうした可能性を微塵も考慮していなかった。その自信はどこから来るのか。
私はこの調査を通じて、「婚活」という発想を得た。結婚する意思はあるが、その現実性や手段を認識していない人々に対し、現実を知らしめ、行動を促す必要がある。それが「婚活」という概念、ワードの誕生の出発点だった。







