増える単身世帯の高齢者
懸念される孤独死

 お茶の水女子大学名誉教授の藤崎宏子氏は、この状況を「介護の再家族化」として警鐘を鳴らしている。かつて高齢者介護の担い手は、専らその家の娘や嫁だった。それが介護保険制度の導入で、「介護の社会化」が進むと期待されたにもかかわらず、結局のところ「家族」、特に女性に負担が再び集中している現状を指摘している。

 もちろん国だって「女性が介護をすべき」なんて一言も言っていない。しかし多くの場合、現実的に家事・育児と並んで、女性に介護負担が大きくのしかかっている。介護をする大人の女性がいなければ、働き盛りの男性の介護離職や、幼い家族のヤングケアラー化などが起き、「家族のリスク」はさらに上昇する。

「住み慣れた自宅の畳の上で死にたい」という表現がある。しかし、単身世帯の高齢者がここまで増えている時代に、いかに「自宅の畳」でも独居老人の孤独は計り知れない。その先に孤独死が待っているかもしれないとしたら、その恐怖はいかばかりか。

 ちなみにコロナ禍では、「将来、孤独死になったらどうしよう……」という不安を抱く大学生たちが少なからずいたが、今の若者でさえ「家族」がいない高齢者の未来を非常に憂えているのである。

 実際に私の周囲でも、ひとり暮らしの高齢者が人知れず亡くなり、死後数日から数週間後に発見される事例が増えている。ひとり暮らしが困難になった時、そこまで高額のお金がなくても安心して暮らせる、人とともに生活を営める仕組みを考えていきたいものだ。

50代男性の3分の1
女性の3割が独身の時代

 ここで改めて「人生100年時代」において想定される「長寿リスク」を整理してみよう。第一に挙げられるのが、これまで見てきた「介護リスク」である。誰が高齢者の介護を担うのか、その費用をどう捻出するのか、そして自分自身が高齢になった時、誰に介護されるのか、こうした不安がリスクとして存在する。

 次いで、長生きをするほど「家族や親しい友がいなくなるリスク」も高まる。