配偶者がいても、離婚や死別で失うこともある。頼りにしていた子どもに見放されるリスクもある。2020年の国勢調査では、50代男性の3分の1、女性の3割が独身であることが明らかになっている。独り身が悪いわけでは決してない。独り身ならではの自由、気ままさもあるだろう。だが、「不安」がそうしたポジティブな思いを凌駕してくるとなると問題だ。

 2022年に私がネットサンプルで実施した1126人への調査では、「50代独身者の将来不安」として、「十分な介護が受けられなくなる」(79.1%)、「経済的に十分な生活ができなくなる」(77.1%)、「孤独死してしまう」(74.7%)などが挙げられた。つまり独身高齢者の7~9割近くが、長生きすることに強い不安を抱いている。

図表:「50代独身者の将来不安」
同書より転載 拡大画像表示

引きこもり状態の人の約半数は
40歳から64歳までの中高年層

 その対極にあるのが、最近増えている「家族に頼られるリスク」である。結婚し、子育てを終え、ようやく自分の時間を取り戻したと思った矢先に、子どもが失職・離婚・病気などで実家に戻ってくる、いわゆるパラサイト・リターンである。過度の依存状態までは行かずとも、家事・育児・介護の担い手として再び頼られたり、金銭的に支援を求められたりするケースも少なくない。

 そのため今、「家族じまい」というサービスも生まれている。高齢の親とかかわりたくない中年の子が、お金を払って親との関わりを断ってもらうというサービスである。今はまだ料金が高いし、利用する人も限られている。今後、高齢の親の世話が負担だという子が増えてくれば、このようなサービスも広がっていくだろう。知人の大学教授が引退し、しばらくたった頃、「悠々自適な引退生活ですよね?」と尋ねたら、「それどころではないよ」と返ってきたことがある。独立して結婚したはずの娘が離婚し、孫を連れて実家に戻ってきたというのだ。