改めて当時を振り返ってみると、見よう見まねではあるものの、ひとつひとつの内容は悪くないのです。ただ、「ストーリー」があまりに足りないことに気付きます。これまでのセゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス(R)・カードのイメージからすると、まず5万円の有料イベントが唐突でした。

 さらに、イベントをやることが目的化してしまい、そのお店を選んだ根拠やソプラノ歌手を招いた文脈も魅力的に伝えることができていなかったように思います。つまり、表層的な真似だけをして、突然それっぽいことをやってもうまくいかない。きちんと、ブランドとしてのスタンスやビジョンを明確にし、会員にも理解してもらったうえで、コミュニケーションツールとしてイベントが機能していなければ、誰も賛同してくれないのです。

イメージしていた“富裕層”は
せいぜいアッパーマス層だった

 さらに、これがブラックカードの開発となると、当時の私にはさっぱりわからず、想像すらできません。「プラチナのポイント還元が0.75%なら、ブラックは1~2%の還元率が妥当では?」「マイルは1000円で10マイル貯まるなら、ブラックは20マイル貯まる?」など、いま考えると恥ずかしいような発想ですが、当時は真剣そのものです。

 一方で、ファイナンス事業部から「ローン商品の金利0.1%優遇なら出せます」と言ってくれても、いまいちピンとこなかったのです。当時の私にとってローンのイメージは高くても1億円くらいでした。それだとせいぜい10万円程度の話です。でも富裕層は扱う不動産の桁が違うわけですから、いま思えばそちらの方が有効だと理解できます。

 当時イメージしていた“富裕層”というのが、せいぜいアッパーマス層から準富裕層だったことがよくわかります。

 さらにいえば、その頃の私にとって「不動産を買うのにローンでお金を借りる」ということは「お金が足りない=富裕層ではない」という発想だったのです。