前述したように、この方は決してコンシェルジュに不満があるわけではありませんでした。むしろ、急な依頼に応え、手間を惜しまずさまざまな手配を代行してくれる手際の良さに感心されていました。

 しかし、それはあくまで機能のひとつに過ぎず、「このコンシェルジュでなければダメ」という、替えがきかないレベルにまでは到達していなかったのです。「どんなに高級なレストランを予約してもらえるよりも、旅行先で自分が知らない小さなことを教えてもらった方が何倍も価値がある」という言葉は、その方の価値観を的確に物語っていました。

 このように、数々の富裕層に直接ヒアリングを繰り返しながら、私たちが考える「凄いこと」は、富裕層にとって「普通のこと」であり、逆に富裕層にとって価値があることはもっと別の場所にあるのではないかと考えるようになりました。

 あのときいただけた一言は、私の考え方が大きく変わる衝撃を与えてくれたのです。奇しくも、自分の常識を超える「一歩踏み出す勇気」が、ここでも重要になりました。