代表デビュー直後からしばらく抱いた思いを、堂安は「自分が、自分がと思いがちだった」と照れくさそうに打ち明ける。だからこそ、いま現在に至る心境の変化はイコール、クラブチームとは対照的に年間の活動日数が著しく限られる代表チームで、森保監督から色濃く受けてきた薫陶の跡を物語る。

「自分のパフォーマンスがどうであれ、ワールドカップで勝ちたい、という思いが強い。自分が追い求めているゴールやアシストじゃなくても、泥臭い守備でもいいからチームに貢献したい。以前の自分とは違う新しい一面が出てきている。そういうチーム作りをしてきた監督やスタッフは本当にすごいと思う」

招集でもベンチ入りなしの長友選手が
森保監督に言ってきたこと

 これまでの日本代表は、ワールドカップごとに監督を交代させてきた。慣例を覆す形でカタール大会後も続投した理由は実績に加えて、周囲への気配りを欠かさない誠実な人柄が選手たちやスタッフを引きつけ、現在進行形でチーム内の一体感を高めている軌跡もも大きく関係している。

 たとえば代表活動を終えた後には、時間もバラバラに、場合によってはフライトの関係で深夜に所属クラブへと戻っていく選手たちを、宿泊先のホテルロビーで森保監督が見送る姿が恒例となっている。

 代表に招集しながら、試合で起用しないどころかベンチ入りメンバーからも外し続けてきた長友とは知られざるひと幕があった。試合前夜。森保監督はベンチ入りメンバーから外れた選手たちの部屋を訪ね、自らの言葉で決定事項を伝えてきた。指揮官の配慮に感謝しながら、長友はこんな言葉を残している。

「(試合前日の)夜まで多分、選手の選考に関してはかなり悩んでいると思います。そのなかで僕が常に監督に言ってきたのは『次は絶対に選んでもらえるようにしてみせます』と。それだけです」

 こうした性格の森保監督だからこそ、100試合の大台到達も謙虚な言葉で振り返っただけだった。