まず、晒しが生じて、それが過熱し、ネットリンチが始まるまでの過程を順を追って見ていこう。途中から無限ループに入り、騒動が際限なく肥大化していく様子も観察できることと思う。

「晒し」が生まれる最初のステップ

 最初はSNSなどへの1ユーザーの投稿である。バイトテロなどは投稿者が無自覚のうちにマナー違反を起こして糾弾されるパターンである。

 もうひとつのパターンは問題提起型で、ゴミのポイ捨てとか自転車の逆走とか、警察に捕まるほどではないけど街中で見かけると嫌な気分になるマナー違反を収めた画像や動画が投稿されるものである。

 投稿者がその投稿によって願っていることは、「ゴミのポイ捨てってやっぱりよくないですよね」といった社会への問題提起や、ポイ捨てした人に改心を求めること、あるいは制裁などである。

 と同時に承認欲求や投稿が拡散されることへの快感、投稿が多くの人に見られるのも事実だ。特にYouTubeでは収益化を狙うこと(つまりは金稼ぎ)ができるという下心もあり得る。

 投稿者の心はどれか1要素で1色ではなく、それぞれが何割かずつで混然としている。使命感しか自覚していなくても無意識にバズることを欲していたり、といった具合である。

 次に拡散のフェーズである。

 まず、「正義」という名目の元に何かを叩くと脳が快楽物質ドーパミンが出す。叩くことに快感を覚えてさらに叩きたくことを「正義中毒」と呼ぶことがあり、これは脳科学的に説明される状態であるそうだ。

 また、正義は悪意や害意に比べて抑制が効きにくい性質がある。「正義」によって歯止めがきかずに行為が暴力味を帯びていくことは往々にしてある。

 正義感で憤った人たちが集まってくると人々は「集団」へと変質し、そこで群集心理が作動する。

脱個人化:群集に溶けることで個人の自覚や責任の所在があいまいになる→参加・加担している意識が薄れ、抑制が外れやすくなる。

同調圧力:周囲の勢いに賛同したくなる心理。不本意ながら大勢の行動にのっかってしまうこともある。

多元的無知:「周りはこう考えている」と勝手に考えて(空気を読んで)、自分を抑圧する。「裸の王様」で、王様の服が見えていないのに周囲に合わせて王様の服を褒めているときの状態。晒し叩きが過熱しているとき、「みんながそれに賛成している」と感じやすく、留保やたしなめの意見を発しにくい→誰も止めないので過熱がさらに強まる。

エコーチェンバーと集団極性化:似た意見が可視化され閉鎖的な環境でどんどん大きくなり、意見や批判が一方向により過激になる。

 これらは炎上が過熱する際に発動している群集心理である。