2次利用された動画でさらに加熱
晒し叩きが過熱した案件・過熱しつつある案件はSNSクリエーターたちにとって格好のネタである。ためしにYouTubeで「バリ島 万引き」などで検索してみれば、その件を報じたりその件について私見を述べたりする動画がものすごい量表示されるのを発見するであろう。
個人メディアやユーチューバーなどがこぞって投稿しているそれらの動画は、どれも切り口やテンションに個性があり、説得力を備えるものがあったりして、たしかに見ていて面白いのである。
それらは報道の役割を担ってもいるが、従来のテレビや新聞が担ってきたそれより刺激が強く、事件をエンタメとして消費する娯楽色が濃い。
ここに、公共のメディアと個人メディア(ユーチューバーなど)の、成立している前提に起因する差がある。公共のメディアは一応、公益や社会性に貢献するという立場にのっとって報道を行う(という建前のもと品のない報道もあるにはあるがそれはここでは置いておく)。
一方個人メディアは、純粋な報道ではなく、承認欲求や「再生数を伸ばして収益を挙げたい」といった個人の思惑が混ざったものである。そしてその世界で収益を上げるには競合と競っていく必要があり、エンタメ色を強める過程で「よそより楽しく」「よそより過激に」と、表現が先鋭化されていく。
これによって事件に関心を持つ人がさらに増えて、叩き騒動に参加していく。しかもその人たちは先鋭化された表現の洗礼を受けた人たちだから、表現がもっと過激になっている。過激な群集がどんどん増えていく過熱ループである。事件がSNSクリエーターに2次的に利用されることで、もっと大きな叩きとなるのである。
さらに、最近YouTubeショートが副業として注目されていて、収益を上げようと夢見た新規クリエーターが続々と参入してきている。自分で撮影した動画をショートとして投稿している人は良心的だが、実はこれは本流ではなく、どこかのSNSに「落ちていた」動画を編集して投稿する者が多い。







