「えっ、もうないの?しかも一番欲しかったE子ちゃんの振り袖姿のやつ。マジかよ」

 落胆したAだが、この店から約1km離れた場所に同系列のコンビニがあることを思い出した。駅を通過するのでいつもの通勤経路から外れているが、「ここまで来たらどうしても欲しい」と足を運んだ。しかし残念なことにその店でもE子の振り袖タオルは在庫なしだった。

「仕方がない。自宅近くの店を当たってみるか」

 店を出たAは、駅まで近道をするために途中細い道に入り、階段を降りはじめたが、途中の段差で足を踏み外し、そのまま踊り場まで落下してしまった。

「うっ!」

 Aは痛む右足首をかばい、引きずりながら何とか帰宅。しかし、翌日ますます腫れと痛みが増してきたので、有休を取り自宅近くの整形外科に行ったところ、医者から「捻挫(ねんざ)しているので、3日後に再度病院に来るように」と言われた。この場の病院代は自らの健康保険を使い、レンタルした松葉杖の保証金1万円は自費で支払った。

会社帰りのケガなら、労災扱いになるのでは?

 翌日、杖をつき、痛々しい姿で出勤したAを心配したB課長が声をかけた。

「どうしたA君、大丈夫か」
「会社帰りにコンビニへ寄り道して、その帰りに階段で転んで捻挫したんです」
「そうか……。昨日はただ『道で転んで足が痛いので有休下さい』としか聞いていなかったから言わなかったけど、会社帰りに転んだなら労災が使えるんじゃないか?」
「えっ、そうなんですか?」
「労災を使うと病院代はタダになるよ。俺も前の会社で通勤途中で転んでケガしたとき、そうだったもの。とにかくC部長のところへ行こう」

 その後、B課長とAは総務セクションを訪ねた。B課長はAの状況を説明した後C部長に尋ねた。

「会社帰りのケガだったら、確か労災が使えますよね?」

 C部長はAに質問した。