D社労士はさらに話を続けた。

「従業員には「通勤災害の範囲」を周知し、寄り道によるリスクを理解させることと、仕事中や通勤途中でケガなどをした場合はすぐに会社に届け出ること、転居などで通勤経路に変更があった場合はすぐに届け出ることを徹底してください。自分の健康保険を使って治療を受けると、後の手続きが煩雑になりますからね」

 翌日、C部長はAに対して、「顧問社労士に相談したが、労災は認められないだろう」との見解を得たことを説明した。Aはガックリと肩を落としたが、転んだ自分が悪いと納得した。

「明日から正月休みだというのに、足が痛くてどこにも行けない。友達との初詣の約束もパーか……。その上病院代のせいで金欠かよ。とほほ……」

正月休みで、足は治った?

 正月明け、出勤したAにB課長が声をかけた。

「あけましておめでとう。足の具合はどうだ?」
「はい。腫れも引いて、何とか杖なしでも歩けるようになりました。午後、また病院に行ってきます」
「それはよかった。しかし、治療費とかの出費は大変だったろう?」
 Aは照れ笑いをうかべた。
「大丈夫です。自分の状況をSNSで友人たちに流したところ、僕が買い損ねたE子ちゃんのスポーツタオルを探してくれ、お見舞いがわりだといってプレゼントしてくれました。おかげでそのタオルが80枚になったので。いらない分はオークションで売っちゃおうかと。治療代以上に儲かりますよ」
「はあ……」

 屈託のない笑いを浮かべながら話すAに、B課長は返す言葉がなかった。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。