「君がコンビニに寄り道した理由は何?」
「えっと……推しキャラの限定プリント入りスポーツタオルを買うためです」
「スポーツタオルねえ……しかも推しキャラ入りの?」
「はい、3種類のうち1つが手に入らなくて、探しに行きました」
「そのコンビニの場所って、会社に届け出をしている通勤経路の途中にあるの?」

 Aは首を左右に振った。C部長は「それじゃあ、労災はダメかもね……」と言いながらため息をついた。

「でも、私が転んで捻挫したのは会社帰りです。どうしてダメなんですか?」
「俺が前の会社にいたとき、仕事帰りでカラオケに行き、店から出たところで道の段差につまずきケガをした。その時一緒にいた友達から会社から病院代が出ることを聞いたので、次の日会社に届けたら、健康保険で支払うように言われたよ。つまり会社帰りのケガで労災扱いになるのは、会社に届け出た経路での通勤中に限るそうだ。だから君の場合も俺と同じパターンだよ、きっと」
「そんな……病院からは『明後日また来るように』って言われているのでお金がかかります。ただでさえ推し活のせいで金欠なのに。部長、助けてください」

 Aに泣きつかれたC部長は、念のため顧問社労士に確認したのち、あらためて回答すると答えた。

そもそも「労災」とは?

 翌日の夕方、甲社を訪れたD社労士に、Aの件についての詳細を説明したC部長は、「A君には『労災扱いはダメかも』と言っちゃいましたが、まずかったでしょうか?」と尋ねた。

<労災とは>
○ 労働者災害補償保険法に基づく公的保険制度で、企業のみが保険料を負担する。

○ 労災の種類
(1)業務災害……仕事中や業務に関連して発生した事故や疾病が対象。
(例)工場での作業中に機械に巻き込まれて負傷した場合、
営業活動中の交通事故など

(2)通勤災害……合理的な経路・方法による通勤中の事故が対象。本記事では特にこちらを取り上げる。

○ 労災の給付
労災給付には療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などがあるが、本記事では治療費や入院費用を全額補償する「療養補償給付」について取り上げる。

○ 労災が認められるには、所轄労働基準監督署の認定を受ける必要がある。