ビッグデータ解析と
AIを知財経営に活用する

――2017年ごろに「IPランドスケープ」という概念が作られたことで、知財への注目度が高まったように思います。

柳澤 特許情報は世界中の技術課題とその解決手段である発明の内容、発明者、権利者、さらには発明の実施例といった情報が体系的に記録された「宝の山」です。どの企業がどの技術に注力しているのか、自社と他社の強み・弱みはどこか、どの領域がレッドオーシャンでどこにブルーオーシャンがありそうか、誰と組むとシナジーが出そうか――。こうしたことが、特許データを分析することでかなり見えてきます。

「攻めの知財経営で日本企業の競争力は必ず復活する」特許庁が支援を惜しまない理由

 以前から、先進的な知財部は世界中の特許を分析して特許マップを作り、製品レベルで「この企業がこの特許を持っているから、気をつけよう」「こことライセンス契約を結ぼう」といった戦略を練って、事業戦略に活かすということをやっていました。

 それが、ビッグデータ解析とAI分析が飛躍的に向上したことによって、2017年ごろに「IPランドスケープ」という概念が登場し、知財情報分析は圧倒的に進化しました。世界中の知財情報、論文情報、マーケットデータ、企業情報、各国の政策動向の情報などを組み合わせて、技術トレンド分析、自社および他社の強み・弱み分析、ブルーオーシャン探索、パートナーおよびM&A候補探索などを、自動的に行ってくれるツールが開発されています。

 これらの分析結果を経営上の意思決定に活かすことで、経営判断の確度とスピードを上げる、そして経営戦略、事業戦略、R&D戦略、知財戦略の構築につなげていく、こうしたプロセスを、特許庁では「IPインテリジェンス」と呼んでいます。

>>「特許庁総務部企画調査課長 柳澤智也氏に聞く(下)」は12月30日公開予定です。